研究課題/領域番号 |
22K20311
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0110:心理学およびその関連分野
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
中村 彩 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 流動研究員 (30964580)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 自閉スペクトラム症者 / 時間順序判断 / 音源定位 / 聴覚的空間認知 / 両耳間音圧差情報 / 両耳間時間差情報 / 両時間音量差情報 / 自閉症スペクトラム障害者 / 聴覚的空間認知能力 / 感覚特性 / ASDモデルマウス |
研究開始時の研究の概要 |
自閉症スペクトラム障害(ASD:Autism Spectrum Disorder)者は、非定型的な感覚特性をもち、聴覚領域では、音が来た方向がわかりにくい「音源定位の困難」などが知られている。これらの特性は交通事故など危険回避に重要だが、社会性・コミュニケーションの障害など ASD者の持つ他の特性に比べ、あまり注目されてこなかった。本研究では、ASD当事者を対象にした聴覚関連の心理物理実験に加え、申請者 がもつ動物実験技術を用いたモデル動物の解析により、ASD当事者の持つ聴覚特性の詳細な解析と、その神経回路基盤を解明したい。
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研究実績の概要 |
自閉スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder)者の空間認知における聴覚特性についてマウスとヒトを対象に調査し、その特徴と神経基盤を明らかにする計画である。 令和5年度は、前年度に引き続きASD者の聴覚特性を調べるため、ASD者および定型発達者を対象にした聴覚的空間認知能力を評価する実験を行なった。具体的には定型発達者30名およびASD者24名の協力を得て、ヘッドフォン耳聴下音源定位課題および聴覚的時間順序判断課題を実施した。 これらの実験から以下の新規知見を得られた。既発表のASD者の触覚同様、聴覚でも2連続して提示した刺激音の提示位置が近いほど時間順序判断に必要な時間閾値が長くなることから、ASD者も定型発達者同様音情報の空間への位置付けを行った上で時間順序を判断している可能性が示唆された。 また、両耳間音圧差・両耳間時間差情報を用いた音源推定では、ヘッドフォンから提示した高音をより頭の前方で定位する傾向がみられた。一方、低音ではその傾向はみられなかった。 成果を、第65回日本小児神経学会総会(ポスター発表)にて報告し、論文投稿中である。以上のように、本研究では、発達障害のなかでもASDに着目して、その聴覚の空間認知特性について、音源定位および時間順序判断における特異性の調査を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでASD者の空間認知機能に関しては、音源定位が苦手であると報告されているものの、どのような条件下でその非定型性がみられるのか、またどのような 神経メカニズムに起因しているかは一定の結論が得られていない。本研究では、ヘッドフォンを用いた心理物理実験を行い、ASD者では両時間音圧差および両耳間時間差情報に基づく音源定位において、定型発達者より音源を前方に定位する傾向を見出した。一方、先行研究から導き出した「ASD者は感覚情報を空間に位置付けずに時間順序判断を行っている」という仮説に基づき、聴覚情報から空間を認知する能力を調べるため時間順序判断課題を行なったが、定型発達者同様に音情報の空間への位置付けを行った上で時間順序判断を行っていることが示唆された。これらの結果を国内学会で発表した。この実験に関してはデータ収集を終えており、論文投稿中である。一方、ASDモデルマウスを用いた聴覚的空間認知機能の評価については、専門家との議論を通じて現在タスクを設計している。出産による研究中断のため、この実験に関しては当初予定より遅れているが、研究再開後速やかに予備実験を開始する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ASDモデルマウスの聴覚特性を評価する実験系開発を進める。現在設計しているタスクを実装し、予備実験の開始を目指す。野生型マウスで安定的な評価が可能となった場合には、引き続いてASDモデルマウスでの評価を行う。2024年度中には結果をとりまとめて成果発表を目指す。一方、実験データ取得を終えたASD者の音源定位については現在論文投稿中であり、聴覚時間順序判断課題に関しても現在論文執筆中である。これらの2024年度中の発表を目指す。このASD者を対象にした実験の解析データから、抗ADHD薬が音源定位に影響する可能性が示唆されているため、ASDモデルマウスを用いた薬理学的な実験操作等についても検討を進める。
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