研究課題/領域番号 |
22K20341
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0201:代数学、幾何学、解析学、応用数学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
村山 拓也 九州大学, 数理学研究院, 助教 (70963974)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | レヴナー方程式 / 小松・レヴナー方程式 / シュラム・レヴナー発展 / 多重連結領域 / 小松・レブナー方程式 / 縢りブラウン運動 |
研究開始時の研究の概要 |
統計物理における2次元臨界現象を記述する道具として,SLE(シュラム・レヴナー発展) なる確率場が知られている.SLEは,単連結な平面領域に定義される「共形不変な」ランダム曲線である.従前,それを多重連結領域へと拡張する試みが散発的になされてきた.本研究の目的は,それらの試みを統合する横断的理論の構築である.4つの異なる既存理論を関係付け,臨界現象に相当する共形不変確率場の構造の解明を目指す.
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研究実績の概要 |
本年度は主に,Loewner方程式を支配する時間依存の正則ベクトル場を一般化する研究に取り組んだ.古典的なLoewner理論においては,等角写像の族が時刻径数について線型に依存する場合を扱う.その結果,方程式に現れるのは通常の時間偏微分となる.一方,時刻径数への線型依存を仮定しない立場もまた自然である.しかし,その場合は微分の意味を一般化するか,あるいは同値な方法として積分方程式を考えるかする必要がある.代表者自身も過去の研究で前者の立場を採り,有限多重連結領域上の小松・Loewner方程式を一般化している.今回は,単連結領域上ではあるものの,後者の積分方程式の立場を採り,Loewner方程式を一般化した.この定式化の利点は,正則ベクトル場から定義される特徴量の収束と等角写像族の収束とが同値となる点である.この特徴量は,非可換確率論における独立増分過程とも対応しており,それ自身興味深い.また,この等角写像族の収束という視座は,SLE理論において極めて自然に現れ,かつ非常に重要な問題意識である.Loewner積分方程式という定式化を追究することで,多重連結領域上のSLE理論へも新たな視点がもたらされることを期待している. 上記した他にも,函数論における古典的な技法を本研究の視点で再収集し,多重連結領域上の解析を遂行するための手掛かりを探った.例えば,タイヒミュラー空間論における古典的な擬等角写像の利用や,極値的長さとポテンシャル論との関係などである.そのような技法を用いて小松・Loewner方程式の具体的な解析を行う方法を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載の通り,本年度はLoewner積分方程式という重要な対象に取り組み,一定の成果が現れている.また,様々な研究集会での情報収集ならびに研究連絡を通じて,今後追究すべきいくつかのアイデアが得られている.これらを鑑みて,本研究はある程度順調に進展しているものと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
Loewner積分方程式に関連した研究については,共著者との執筆作業を経て学術誌に投稿予定である.また,上記した小松・Loewner方程式の解析については,今後順に検討・実行に移していく予定である.この間,多くの研究集会に参加して情報収集に努め,確率論・函数論・数理物理それぞれの観点を深めることで,研究のさらなる進展を図る.
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