研究課題/領域番号 |
22K20347
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0202:物性物理学、プラズマ学、原子力工学、地球資源工学、エネルギー学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
長田 礎 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (00956287)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ニッケル酸化物 / 酸化物ヘテロ構造 / 酸化物エレクトロニクス / 強相関電子系 / 超伝導 |
研究開始時の研究の概要 |
2019年のニッケル酸化物超伝導の発見は、高温超伝導機構の解明に向け、新しい道筋を与えた。しかし、ニッケル酸化物で起きる超伝導は、これまで正孔ドープした化合物に限られており、電子ドープ型化合物の合成報告はまだない。これは、母物質において、ニッケルがすでに Ni1+という異常低原子価状態をとっており、直接的にAサイトを4+イオンで部分置換することが困難であることに起因する。本研究では、酸化物ヘテロ構造による界面電荷移動を利用して、ニッケル酸化物の電子ドープを試みる。
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研究実績の概要 |
2022年度は、パルスレーザーアブレーション成膜装置を用いてペロブスカイト構造を持つLaNiO3薄膜の試料合成を行い、単結晶薄膜を合成する製膜条件を確立した。薄膜試料の構造評価にはX線回折装置、原子間力顕微鏡を用いた。製膜条件探索の過程で、基板温度とパルスレーザーエネルギー密度が、薄膜試料の結晶性と化学組成に大きく影響することがわかった。これらの条件を調整することで、原子レベルで平坦な表面を持つ結晶性の高い試料を得ることができた。また、これらの試料の低温電気輸送特性を測定し、薄膜試料の組成依存性を調査した。X線回折の結果と低温電気輸送特性を比較することで、薄膜試料の化学組成と低温電気輸送特性との関連を調べた。LaNiO3薄膜の最適な化学組成と高い結晶性は、還元処理後に層状構造を得るために非常に重要となる。 LaNiO3薄膜試料の製膜条件探索と並行して、無限層構造を持つLaNiO2を合成するためのトポケミカル還元条件の探索を行った。トポケミカル還元は、結晶の構造を維持したままイオンを取り除く還元手法であるが、イオンの移動を伴うため最適な温度におけるアニール処理が必要となる。アニール処理条件を調整することで、高い結晶性を維持したLaNiO2薄膜試料の合成条件を確立した。また、界面電荷移動を誘起する第二層の製膜を行い、合成条件の探索に取り組んだ。 Srを化学ドープした(La,Sr)NiO2試料の合成に取り組み、製膜・還元条件を確立した。さらに、これらの試料の低温電気輸送特性を測定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたペロブスカイトLaNiO3薄膜の製膜条件とトポケミカル還元条件を確立し、低温電気輸送特性を測定することができた。また、当初の計画には含まれていなかったSrドープした(La,Sr)NiO2薄膜の合成条件を確立した。 以上を総合すると、本研究課題は、当初の計画通り概ね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に実施したLaNiO3薄膜の製膜・還元条件探索の結果に基づき、LaNiO3単結晶薄膜上に、第二層を堆積する。ヘテロ構造薄膜にトポケミカル還元処理を施すことで無限層LaNiO2に界面電荷移動の誘起し、電子ドープを試みる。低温電気輸送特性の測定などによって物性を評価する。
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