研究課題/領域番号 |
22K20350
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0202:物性物理学、プラズマ学、原子力工学、地球資源工学、エネルギー学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高三 和晃 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (80893768)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | アクティブマター / 量子開放系 / 非平衡系 / フロッキング転移 / 非平衡量子現象 |
研究開始時の研究の概要 |
アクティブマターは、自ら動く粒子の集まりであり、鳥や魚の群れ・バクテリア集団などのモデルとして盛んに研究されている。我々は最近、量子力学に従う多粒子系に対してアクティブマター概念を拡張した「量子アクティブマター」を初めて提案した。平衡状態では生じえない相転移を示す量子アクティブマターは、新しい量子物質相を探索する沃野であり、物性物理学の新たな方向性を拓くものである。しかし、まだ少数の例が見つかったに過ぎず、その全体像は明らかになっていない。そこで本計画では、量子アクティブマターの基礎理論を構築し、それを人工量子系や固体電子系を舞台とする物性科学へ応用することを目指して理論研究に取り組む。
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研究実績の概要 |
本課題では、我々が新たに見出した非平衡物質相である「量子アクティブマター」に関して、①基本的性質の解明を通じ基礎理論を構築すること、②実験や応用に向けた具体的な理論提案を行うことを目指している。新概念である量子アクティブマター物理の基礎を確立し、それを人工量子系や量子物質(固体電子系)を舞台とする物性科学へ応用するための第一歩を踏み出すことが本計画の目的である。初年度である今年は①「基礎理論の構築」に重点を置いて研究に取り組んだ。最も注力したのは、フロッキング転移(群れの形成)を示す新たな量子アクティブマター模型の構築である。以前の研究で我々は、「運動性誘起相分離 (Motility-induced phase separation)」と呼ばれるアクティブマター特有の相分離現象に注目していたが、アクティブマターの代表的な相転移現象として「フロッキング転移」も知られている。これは、バラバラに運動していた粒子が、アクティブ性を強めることで、粒子が群れ(フロック)を作って一方向に運動するようになる相転移である。以前の我々の研究でも、フロッキング転移自体は狭いパラメータ領域で見出されていたものの、十分に調べられなかった。そこで我々は、新たにスピン間相互作用を導入した量子アクティブマター模型を考え、この模型の性質を数値計算(厳密対角化・密度行列くりこみ群法)で調べた。その結果、この模型は幅広いパラメータ領域でフロッキング転移を示すことが分かった。この内容については、その一部を国際ワークショップやセミナーで発表した他、現在論文を執筆中で、近日投稿予定である。また、これ以外にも、量子アクティブマター研究につながる非平衡現象の研究も進めている。中でも、Drudeウェイトと呼ばれる輸送現象を記述する物理量に関する理論的研究については論文を出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去に行った相分離に関する研究に対して、相補的な関係にあるフロッキング転移の研究を行えたことで、アクティブマターにおける代表的な相転移現象である2つをカバーすることが出来た。これは「量子アクティブマター物理の基礎を確立する」という本年度の目標に向けた重要な成果であり、研究は順調に進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で量子アクティブマター物理の基礎的な部分の確立が進んだので、来年度はその成果を踏まえ、より現実的な実現提案に向けた理論研究に注力する。特に、事後選択(post-selection)を用いないタイプの量子アクティブマター模型の実現提案を行うことを考えている。さらに、これまでの研究はいずれもボソン系であり、フェルミオン系の研究を行うことで量子アクティブマターの物理の幅を拡げることも予定している。フェルミオン系ではより顕著な量子効果が期待できるので、”量子”アクティブマター特有の物理を調べることが出来ると予想される。
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