研究課題/領域番号 |
22K20355
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0202:物性物理学、プラズマ学、原子力工学、地球資源工学、エネルギー学およびその関連分野
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
金井 綾香 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (90960849)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 硫化物薄膜 / 化合物太陽電池 / 伝導帯傾斜構造 / Cu2SnS3 / Cu2(Sn1-xGex)S3 |
研究開始時の研究の概要 |
Cu2SnS3(CTS)を光吸収層に用いたレアメタルフリー低コスト次世代太陽電池の開発のために、従来には無いバンド構造の抜本的な見直しを図り、生成した電子の再結合を確実に抑制することができる新規電子輸送構造を実現し、CTS太陽電池の変換効率の飛躍的な向上を目指す。そのために新規3ゾーン硫化炉を用いてCTSに対しGeを加えることにより薄膜の深さ方向に対し、伝導帯におけるエネルギー位置の傾斜をつけた薄膜を作製する。さらに、様々な条件のエネルギー傾斜をつけたCTS太陽電池を作製し、それらの電気的特性を調査することにより変換効率との相関を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では次世代CTS系太陽電池における高効率新規電子輸送構造を実現するために、伝導帯下端のエネルギー位置をGe/(Ge+Sn)組成比(以後、x比)の変化により容易に制御できるCu2(Sn1-xGex)S3 (CTGS)固溶体材料に着目し、本年度はCTGSにおけるx比の変化が、薄膜の電気特性や欠陥特性にどのような影響を与えるのかについて調査を行った。具体的成果を以下に記す。 (1) x比の増加とともに結晶粒径が増加することが観測され、Ge添加によりCTGSの結晶成長が促進することが分かった。しかし、x比が0.2近傍になると粒は島状に成長し、裏面電極が露出する箇所も観測されたため、x比が多い領域で成膜することは素子としては不向きである可能性が示唆された。 (2) EDSマッピング分析より、CTGS表面における粒界付近にGeとOが多く存在していることを観測した。仮に粒界に酸化ゲルマニウムのような化合物が形成されていた場合、生成する電子の移動を阻害し、移動度などに影響が生じることが示唆された。 (3) フォトルミネッセンス法により異なるx比のCTGS薄膜における活性化エネルギー (Ea)を推測したところ、x ~ 0.2までであればEaはx比の増減に関わらず、アクセプター準位のエネルギー位置は浅いまま変化しないことが明らかになった。従って、(2)のx比の増加に伴うキャリア濃度の減少はGeに由来するドナー源の生成が影響していることが示唆された。 以上を踏まえ、本研究の目的である組成傾斜構造を施したCTGS薄膜太陽電池を実現する際には、(1)~(3)のCTGS薄膜における結晶成長および光学・電気特性の観点からx比の領域は0.0 ~ 0.2の範囲に制御することが重要であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画前半で達成すべき、CTGSのx比の変化に対する薄膜の光学・電気特性への影響に関する知見を得ることに成功し、発電する太陽電池素子を作製する際の指針を立てることが出来た。これら一連の成果により、招待講演や査読付き論文にて研究報告を行うなど研究全体として順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
CTS系太陽電池における更なる高効率化を目指し、組成傾斜構造を施したCTGS太陽電池の作製を試みる。また、CTGS太陽電池におけるx比を変化させた時の変換効率への影響を調査し、前年度で明らかにしたCTGS薄膜の電気特性(キャリア濃度及び移動度)及び欠陥特性(フォトルミネッセンスにおける発光)などで得られた知見と比較検討することにより太陽電池における変換効率向上の糸口を調査する。
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