研究課題/領域番号 |
22K20362
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0202:物性物理学、プラズマ学、原子力工学、地球資源工学、エネルギー学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
成塚 政裕 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (20960173)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 超伝導 / 原子層薄膜 / ツイストロニクス / 走査トンネル顕微鏡 / 分子線エピタキシー法 / 電子ネマティシティ |
研究開始時の研究の概要 |
近年バルクでは従来型超伝導を示すが、原子層程度への薄膜化や異種物質との接合によって非従来型超伝導に類似した振る舞いを示す系が報告され始めている。本研究ではこの“誘起された” 非従来型超伝導状態を生じる系の一つと考えられている原子層NbSe2 を対象に、外部強磁場印加及び精密な原子層数操作によって従来・非従来超伝導の境界を制御し、走査トンネル顕微鏡を用いて詳細な電子状態を調べる。
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研究実績の概要 |
本年度は、回転対称性の低下した超伝導状態の発現が報告されている遷移金属カルコゲナイド超伝導体NbSe2に対し、走査トンネル顕微鏡(STM)測定を用いた準粒子干渉効果(QPI)測定から超伝導状態を直接的に調べる研究を行った。具体的には、(1) STMに適したレベルの清浄で平坦なNbSe2超薄膜の作製、(2)単層NbSe2薄膜上でのQPIを行った。(1)では、申請時から発展し、シリコンカーバイト基板上のエピタキシャルグラフェン膜上に広く平滑なNbSe2単層薄膜の作製に成功した。NbSe2単層薄膜成長時の条件だけでなく、エピタキシャルグラフェン膜の成長条件がドメイン壁や格子欠陥の少ない高品質なNbSe2単層薄膜に重要であるという知見を得た。(2)では、NbSe2超薄膜のSTM測定を行い、実際に単層NbSe2で知られている電荷密度波秩序、明瞭なコヒーレンスピークを持った超伝導ギャップの測定に成功した。さらにQPI測定から、NbSe2の結晶軸方向と異なる方向を向いたシグナルが超伝導状態のフェルミエネルギー極近傍でのみ発達することが明らかになった。詳細な構造の分析から、興味深いことに実際の試料では基板のグラフェン膜とNbSe2単層膜の結晶軸が自然にひねり角をもって積層し、さらに超伝導の電子状態にそのひねり積層の効果が現れていることが明らかになった。この結果は、先行研究で報告された回転対称性の低下とは異なる種類の回転対称性の低下した超伝導状態であり、下地であるエピタキシャルグラフェン膜とNbSe2がつくるモアレ周期を反映したポテンシャルの空間変調がNbSe2の超伝導状態に影響を与えている可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は、バルクでは従来型超伝導を示す物質が原子層程度への薄膜化や異種物質との接合によって超伝導の特性を変えるメカニズムを調べることであり、その観点からこれまでに報告のない回転対称性の低下した超伝導状態を観測したことは、現在までの進捗状況として格段の進展があったと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
下地であるエピタキシャルグラフェン膜とNbSe2がつくるモアレ周期を反映したポテンシャルの空間変調がNbSe2の超伝導状態に影響を与えている可能性があるため、積層のひねり角度を変えた場合にどのように超伝導状態が変化するかは今後取り組むべき課題である。積層角度は試料作製時に制御できず、測定時に決定するため今後も実験を継続しデータの蓄積が必要である。また、特異な超伝導発現機構に関して、理論家とも相談しながら検討を行う。
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