研究課題/領域番号 |
22K20366
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0203:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
和田 知己 東京大学, 宇宙線研究所, 特任研究員 (60963022)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 高速電波バースト / マグネター / 中性子星 / 突発天体 |
研究開始時の研究の概要 |
高速電波バーストは電波帯域でミリ秒より短い継続時間をもつ突発天体であり、その放射機構や起源天体は未解明である。 ここ数年の観測的な進展がめざましく、月程度の周期性を示す天体や、起源天体周辺の環境が年程度で変化している天体、電波だけでなくX線でのバーストが観測された天体など、多様性が明らかになってきている。 本研究の目標は今後さらなる発展が期待される多波長・多時間軸の観測から高速電波バーストの起源天体を解明するための理論的枠組みを構築する事である。
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研究実績の概要 |
本研究では、銀河系内のマグネターから観測された、X線ショートバーストと高速電波バーストの同時放射に関する理論的な研究を行った。この天体現象では、通常観測されるよりエネルギーの高い80keV程度のハードなX線ショートバーストに付随して、高速電波バーストが観測された。ハードなX線ショートバーストを説明するモデルの1つに、磁力線に沿って膨張するファイアボールモデルがある。この磁力線に沿って膨張するファイアボールモデルをかつてなく詳細に調べ、解析的なモデルを構築した。具体的には、マグネターの強磁場効果、マグネター表面からのバリオンローディング、磁力線垂直方向への光子の拡散、サイクロトロン共鳴による輻射加速の効果を詳細に入れてモデル化し、以下のことを明らかにした。(1)ファイアボールに含まれるバリオンの量と、アウトフローの運動学的エネルギーの関係、(2)磁力線垂直方向への光子の拡散が重要となるような、バリオンの量やファイアボールの初期サイズ、(3)光学的に薄くなった領域でのサイクロトロン共鳴散乱による輻射加速が、アウトフローの運動学的光度をどれだけ増大させるか、(4)アウトフローの運動学的エネルギーの一部が高速電波バーストに転換されるという仮定すると、アウトフローに含まれるバリオンの量に下限がつくこと。特に(3)のサイクロトロン共鳴散乱による輻射加速は、これまで考えられていなかった効果であるが、この効果によってアウトフローの運動学的エネルギーが桁で増大しうることが明らかになった。また、サイクロトロン共鳴散乱による輻射加速を、数値計算によって詳細に研究している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膨張するファイアボールモデルの解析的なモデリングが完了したため。 現在は(3)のサイクロトロン共鳴散乱による輻射加速を計算するための計算コードを開発しており、時間はかかっているが概ね当初の予想通りである。
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今後の研究の推進方策 |
(3)のサイクロトロン共鳴散乱による輻射加速の効果を数値計算で明らかにする。この計算はアウトフローの運動学的エネルギーを決定するのに重要である。アウトフローの運動学的エネルギーが高いと、高速電波バーストの後に多波長で残光放射が起こる可能性があり、多波長・多時間軸での理論的予言に重要となる。また、高速電波バーストと同時に放射されうるX線のスペクトルを決定するのにも重要となる。
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