研究課題/領域番号 |
22K20374
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0203:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
辻 直希 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 特別研究員 (80963537)
|
研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 中性子寿命 / 気球実験 / 放射線測定器 / シンチレータ / SiPM / ファイバー |
研究開始時の研究の概要 |
物理学の重要なパラメータである中性子の寿命は、ビーム法とボトル法という2種類の計測法の間で依然として8.6秒もの系統的な違いが知られる重要な未解決問題である。本研究では、月面に衝突する銀河宇宙線により月表面から漏出する熱・熱外中性子を月周回機で測定する第3の中性子寿命の測定法を確立したい。熱中性子と高速中性子・ガンマ線を弁別できるシンチレータを用い、ファイバーを使って大面積化した検出器を製作することで、中性子寿命の精密測定を目指す。さらに実証試験として気球に検出器を搭載して高度30 kmの成層圏まで飛行させ、宇宙線空気シャワー中の中性子成分を測定する。
|
研究実績の概要 |
中性子の寿命が主要な2種の測定手法により違いがある問題に対して、惑星探査衛星による新しい測定手法が考案されている。その実現に向けて、熱中性子・高速中性子・ガンマ線を弁別できるプラスチックシンチレータEJ-270を光センサーSilicon Photomultiplier (SiPM)で読み出す、新しい技術を使った中性子検出器を開発した。 (1) EJ-270を搭載したキューブサット1Uサイズの検出器を開発している。7 cm x 7 cm x 1 cmサイズのシンチレータの側面にSiPMを取り付けるというシンプルな設計で、中性子検出器を製作している。熱中性子用の薄いEJ-270、熱外中性子用の厚いEJ-270、ガンマ線取得用の結晶シンチレータをキューブサット1Uサイズ(10 cm四方)に収めることで、複数ミッションの実現及び衛星搭載機会の拡充を目指している。 (2) EJ-270による熱中性子・高速中性子・ガンマ線の弁別に成功した。EJ-270は、熱中性子・高速中性子・ガンマ線がシンチレータに入射した際の反応過程及び信号波形の違いにより粒子種の弁別を行う。製作した検出器に中性子線源を当て、その信号波形をサンプリングして解析、波形弁別のパラメータを計算した。これにより現行の設計で、熱中性子・高速中性子・ガンマ線の弁別ができることを確認した。 (3) EJ-270を搭載した検出器を気球に乗せて成層圏まで上昇させ、宇宙に近い環境での実証試験を行なった。宇宙に近い低温・低圧、高放射線の環境下で、EJ-270による熱中性子の弁別性能、検出効率を検証した。故障なく回収しデータを取得することができ、中性子の検出数が高度により違うことを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた装置の製作、試験などを実施することができ、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
(1) EJ-270を使った検出器の性能をさらに向上させるために、回路基板や解析手法の最適化を行う。現在は熱中性子・高速中性子・ガンマ線の信号が完全には分離できていないため、できるだけ混合がないように弁別できるように検出器の改良を行う。 (2) シンチレータからの光信号をファイバーを用いて伝送し、SiPMで読み出す手法を開発する。これにより、シンチレータ同士を繋げて大面積の検出器や、位置分解能を持った検出器の開発を目指す。 (3) 製作した検出器を用いた気球実験を複数回行う。検出器の宇宙と同等の環境下での実証試験、及び宇宙線大気シャワーの中性子成分のより詳細な理解を目指す。
|