研究課題
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宇宙から飛来する宇宙線はあらゆるエネルギーを持ち、比較的低エネルギーな宇宙線は銀河系内の超新星残骸、高エネルギーな宇宙線は銀河系外の高エネルギー天体で加速されたと考えられている。しかしながら、その中間のエネルギー帯の宇宙線を加速する天体の正体は、現在も多く謎が残されている。本研究では、中間エネルギー帯の宇宙線の加速源として近年注目されている銀河系内のX線連星ジェットによる宇宙線の加速機構と加速可能な最高エネルギーを、主に電波天文学的アプローチで解明することを目的としている。
本研究は電波観測データの解析に基づき、系内のX線連星SS433から噴出する宇宙ジェットにおける宇宙線粒子の加速機構と加速可能エネルギーを明らかにすることを目的に行われた。我々はSS433ジェット周辺を野辺山45m電波望遠鏡を用いて観測し、ジェットと相互作用している可能性の高い分子雲を発見した。これらの分子雲とTeVガンマ線放射の空間分布との比較から、SS433ジェットで加速されTeVガンマ線の起源となっている宇宙線は主に電子である可能性が高いことを明らかにした。また、ジェットと分子雲との相互作用により磁気乱流が形成され、効率よく宇宙線電子が加速されている可能性が高いことを明らかにした。
本研究により、X線連星ジェットによる宇宙線加速機構が、一般的に考えられる衝撃波統計加速だけではない可能性を示した。このことは、X線連星ジェットだけではなく系外のAGNジェットでも起こっていると考えられる。AGNジェットは観測されている最高エネルギー宇宙線の加速源の候補でもあるが、遠方に存在するためその詳細を観測的に調査することが困難であった。比較的近傍に存在し、その詳細構造が観測されているX線連星ジェットから本研究で得られた知見は、将来的にはAGNジェットにも拡張され、広エネルギー帯域にわたる宇宙線の加速機構の網羅的な理解において重要な役割を果たすと考えられる。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 75 号: 2 ページ: 338-350
10.1093/pasj/psad001