• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 前のページに戻る

分布型音響センシングを用いたスロー地震の高精度な解析

研究課題

研究課題/領域番号 22K20394
研究種目

研究活動スタート支援

配分区分基金
審査区分 0204:天文学、地球惑星科学およびその関連分野
研究機関国立研究開発法人海洋研究開発機構

研究代表者

馬場 慧  国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(地震津波予測研究開発センター), ポストドクトラル研究員 (60963915)

研究期間 (年度) 2022-08-31 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
キーワードスロー地震 / 浅部微動 / 分布型音響センシング(DAS) / 南海トラフ / 地震波エネルギー / 分布型音響センシング(DAS) / 沈み込み帯
研究開始時の研究の概要

巨大地震が発生する沈み込み帯のプレート境界の様相を明らかにするには、巨大地震発生領域の周囲で発生し、通常の地震よりもゆっくりした断層すべりであるスロー地震についての見識を深めることが重要である。本研究では、巨大地震発生領域の一部であり、スロー地震の発生も報告されている室戸岬沖において、海底地震観測網に加えて光ファイバーによる分布型音響センシング(DAS)のデータを使って、スロー地震の震源決定およびエネルギー推定を行う。DASは空間的に密な観測が可能なため、これまでより高精度な推定が期待でき、本研究はDASによるスロー地震観測の先駆的研究になりうる。

研究実績の概要

南海トラフの沈み込み帯では、スロー地震とよばれる、通常の地震よりも特徴的な時間が長い現象が発生している。本研究では、2-10 Hzの周波数帯で観測されるスロー地震である微動を対象として、四国の室戸岬沖に敷設されている海底ケーブルを使った分布型音響センシング(DAS)のデータと、南海トラフ沿いに敷設されている地震観測網DONETのデータによる解析を行った。DASは光ファイバーケーブルに沿ってケーブル各所の歪を計測する技術で、空間的に密な地震観測を可能にしている。2022年度は、2022年1月から連続観測しているDASのデータを使って2022年1月から2月に発生した微動を検出し、DASとDONETのデータを併用して震源決定を行った。2023年度は、DASで観測されたこれらの微動の歪波形について、センブランスが最大となる位相速度を求める手法によって、見かけの位相速度の時間変化を計算した。DASの歪の時間変化に、見かけの位相速度の時間変化をかけ、速度波形を求めた。得られた速度波形をもとに、地震計データで微動の地震波エネルギーを求めたYabe et al. (2019; 2021) の手法によって、DASで観測された微動の地震波エネルギー推定を行った。その結果、地震波エネルギーは10の5乗から10の6.5乗 Jの範囲に、地震波エネルギーレートは10の3乗から10の5乗 J/sの範囲に求まり、Yabe et al. (2019; 2021) が推定した南海トラフや東北沖の微動の地震波エネルギーレートと同程度かやや大きい値が求められた。また、2024年1月1日の能登半島地震のあと、2024年1月1日から2日にかけて微動が南海トラフ沿いで発生し、DASで13個の微動のシグナルを観測することができた。現在、これらの微動の震源解析を行なっているところである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022年1月から2月に南海トラフ沿いで発生していた微動について、分布型音響センシング(DAS)と 海底地震観測網DONETのデータを使って検出および震源決定を行った成果について、EGU General Assembly 2023や2023年度日本地球惑星科学連合大会で発表したほか、国際誌Geophysical Research Lettersに投稿し、査読を受け出版された。本研究で検出・震源決定した微動について、DASのデータを使った地震波エネルギー推定に着手した。DASの歪波形を速度波形に直したときの速度振幅が、同程度の震源距離のDONETにおける速度振幅と同程度の桁であることが確認でき、得られた微動の地震波エネルギー推定結果は、地震計データを使った微動の地震波エネルギー推定の先行研究と整合的な結果が得られた。これらの結果についても、2023年度日本地震学会秋季大会で発表している。
本研究の成果の一部はすでに国際誌に論文として出版されたほか、本年度より取り組んでいる微動の地震波エネルギー推定についての成果も学会で発表している。また、2024年1月に発生した微動についても、解析に着手し始めることができている。以上より、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

2022年の1月から2月にかけて発生した微動の地震波エネルギー推定について、周波数依存性や、各観測点のサイト増幅による推定結果への影響の考察を行う。
2024年1月に発生した微動について、震源決定の解析を進める。2024年1月に発生した微動のシグナルは、海底地震観測網DONETの観測点では2点でしか見えておらず、分布型音響センシング(DAS)による観測を行っている海底ケーブルは直線的であるため、観測点の分布に偏りが生じる。そのため微動のエンベロープ波形(地震波形の包絡線)の各観測点の相関を取る手法や、エンベロープの立ち上がりを読み取る手法では震源決定の解像度が低い可能性があり、振幅情報を使うなど、手法の検討が必要である。振幅情報を使った微動の震源決定を行うために、震源距離と微動の振幅の関係についての考察を進めていく。また、2024年1月に発生した微動は、2024年1月1日16:10JSTに発生した能登半島地震の後に活発化した。遠地の大地震によってスロー地震が誘発される現象はこれまで国内外のさまざまな地域で報告されているので、この微動活動が同様のものか、またどのようなメカニズムでスロー地震が誘発されたのかについての考察を進める。
以上の観点で研究を進め、成果を国内外の学会で発表するほか、論文として国際誌に投稿する。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (8件)

すべて 2024 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件)

  • [雑誌論文] Observation of Shallow Slow Earthquakes by Distributed Acoustic Sensing Using Offshore Fiber‐Optic Cable in the Nankai Trough, Southwest Japan2023

    • 著者名/発表者名
      Baba Satoru、Araki Eiichiro、Yamamoto Yojiro、Hori Takane、Fujie Gou、Nakamura Yasuyuki、Yokobiki Takashi、Matsumoto Hiroyuki
    • 雑誌名

      Geophysical Research Letters

      巻: 50 号: 12

    • DOI

      10.1029/2022gl102678

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Shallow tremor activity observed by distributed acoustic sensing in 2022 and 2024 off the Cape Muroto, southwest Japan.2024

    • 著者名/発表者名
      Baba, S., & Araki, E.
    • 学会等名
      International Joint Workshop on Slow-to-Fast Earthquakes 2024, Mexico
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Characteristics of shallow tremor waveforms observed by distributed acoustic sensing using offshore fiber-optic cable at the Nankai Trough, southwest Japan2023

    • 著者名/発表者名
      Baba, S., Araki, E., Yamamoto, Y., Hori, T., Fujie, G., Nakamura, Y., Yokobiki, T., & Matsumoto, H.
    • 学会等名
      EGU General Assembly 2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Detection of shallow tremors and investigation of their waveform characteristics by distributed acoustic sensing using offshore fiber-optic cable at the Nankai Trough, southwest Japan2023

    • 著者名/発表者名
      Baba, S., Araki, E., Yamamoto, Y., Hori, T., Fujie, G., Nakamura, Y., Yokobiki, T., & Matsumoto, H.
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合大会2023年大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 分布型音響センシングの歪波形データを用いた浅部微動の地震波エネルギー推定2023

    • 著者名/発表者名
      馬場慧・荒木英一郎
    • 学会等名
      日本地震学会2023年度秋季大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Seismological observations by distributed acoustic sensing off the Cape Muroto and around the Tsugaru Strait.2023

    • 著者名/発表者名
      Baba, S., Araki, E., Yokobiki, T., Yamamoto, Y., Hori, T., Fujie, G., Nakamura, Y., Matsumoto, H., Kawamata, K. & Uchiyama, K.
    • 学会等名
      Slow-to-Fast Earthquake Workshop in Taiwan
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 室戸岬沖におけるDASを用いたスロー地震観測2022

    • 著者名/発表者名
      馬場 慧・荒木 英一郎・山本 揚二朗・中村 恭之・藤江 剛・堀 高峰・松本 浩幸・西田 周平・横引 貴史
    • 学会等名
      日本地震学会2022年度秋季大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] Observation of slow earthquakes by distributed acoustic sensing off Cape Muroto, southwest Japan2022

    • 著者名/発表者名
      Baba, S., Araki, E., Yamamoto, Y., Nakamura, Y., Fujie, G., Hori, T., Matsumoto, H., Nishida, S., & Yokobiki, T.
    • 学会等名
      AGU Fall Meeting 2022
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2022-09-01   更新日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi