研究課題/領域番号 |
22K20472
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0304:建築学およびその関連分野
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
高野 麗 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (60964187)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 桂離宮御殿整備工事 / 保存科学 / 文化財建造物修理 / 合成樹脂 / 修理史 / 桂離宮整備懇談会 / 文化財建造物 / 修理 |
研究開始時の研究の概要 |
桂離宮御殿整備工事(昭和51~56年度)は、桂離宮御殿において、創建以降初めての全解体を伴った修理である。 本研究では、既往の研究では体系的に明らかにされていない戦後昭和期における文化財建造物修理の中でも、合成樹脂を始めとした新技術を大規模に応用した桂離宮御殿整理工事に着目し、当時の新技術応用に関する方針や課題を明らかにし、さらに現地調査を行い当時の修理の実態や現状を把握することで、戦後昭和期の文化財建造物修理史を明らかにするための基礎的な研究とすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
桂離宮御殿整備工事で応用された合成樹脂など保存科学的技術をはじめとする新技術について、その方針や課題を明らかにするために、2023年度は次のような調査・研究をおこなった。 まず、2022年度に引き続き、桂離宮御殿整備工事における合成樹脂の使用・劣化状況について、古書院・中書院・臣下控所の垂木・隅木等の軒回り部材における現地調査をおこなった。また、2022年度に実施した楽器の間・新御殿の調査で作成した調書や写真なども含む調査記録のデータ整理と、各部材における合成樹脂の使用箇所、劣化状況、今後の補修案や写真などを記載したカルテの作成をおこない、工事時期の違いにおける合成樹脂の使用量や使用方法の比較検討、各箇所における劣化状況を分析した。2023年度をもって桂離宮御殿の軒回りの調査はすべて終了したため、2024年度は、桂離宮御殿の柱などの軸組み部材や、造作材をはじめとする室内の現地調査をおこない、部材ごとの合成樹脂の使用量や使用方法、工事当初より懸念されていた紫外線の影響による劣化状況の比較検討を進めていく予定である。 さらに、新技術の導入に至るまでの経緯や、修理方針を検討するため、文献調査を実施した。まず、桂離宮御殿整備工事に従事した斎藤英俊博士の一次資料について、補足調査を実施した。さらに、桂離宮御殿整備工事の懇談会委員・小委員会委員として携わり、文化財建造物修理における合成樹脂の使用を指導した関野克について、博物館明治村所蔵の関野克資料の調査をおこなった。桂離宮御殿整備工事だけでなく、戦後昭和期の文化財建造物修理や保存科学に関する資料を網羅的に調査し、当時の文化財建造物修理に対する関野の思想や、資料からみられる当時の文化財建造物の修理方法等について分析し、検討をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、予定していた桂離宮御殿の軒回りにおける調査をすべて終了し、部材のカルテ作成や分析までおこなうことができた。また、関野資料等の文献調査についても実施することができた。桂離宮御殿の内部調査等が未実施であるため、来年度実施し、成果を発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、桂離宮御殿の軸組材および造作材、大ばらし工事により再用した土壁など、室内における合成樹脂の使用・劣化状況について現地調査を実施し、カルテの作成と分析をおこなう予定である。また、合成樹脂の使用量や使用方法、劣化の状況について、工事時期や使用箇所に着目して比較検討をおこなう。さらに、引き続き文献調査なども実施し、修理方針やその決定までの経緯、修理計画、当時の課題などについて検討をおこない、文献調査などから分析した新技術の導入課程やその方針、当時の課題と、現地調査などから分析した修理の実態と現在の状況を比較検討し、新技術の導入や使用の実態を明らかにする。また、研究成果について公表を重点的におこなう予定である。
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