研究課題/領域番号 |
22K20473
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0401:材料工学、化学工学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村上 力輝斗 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (30963665)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 単結晶育成 / マイクロ引き下げ法 / 形状制御凝固 |
研究開始時の研究の概要 |
濡れ性の低い系におけるマイクロ引き下げ法(Dewetting μ-PD法)は、近年開発された表面張力を利用した形状制御単結晶育成法であり、従来は機械加工が困難とされた難加工性高融点材料をシングルプロセスで高速に線材化することが可能である。本手法ではしばしば、結晶径が正の引下げ速度依存性を示すことによって、数百mm/minの引下げ速度においても形状制御性を維持することが可能となる。従来の濡れ性の比較的良好な系におけるμ-PD法では見られないこの特徴に対し、本研究では、前進接触角の速度依存性の観点から検証を行い、新物質探索や新たな工業手法としての適用可能性を探る。
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研究実績の概要 |
本研究では、濡れ性の低い系におけるμ-PD法(Dewetting μ-PD法)における、形状制御性に関する従来のμ-PD法からの特異性について検討を実施する。Dewetting μ-PD法は、近年開発された表面張力を利用した形状制御単結晶育成法であり、従来は機械加工が不可能とされた難加工性材料をシングルプロセスで高速に線材化することが可能な手法である。Dewetting μ-PD法では、従来法と異なり結晶の径が正の引下げ速度依存性を有すること等の特徴が見られることから、前進接触角の速度依存性が影響していると予想される。本研究では、静的角度条件の測定を通じた理論値と結晶育成試験を通じて実現される結晶径から予測される値のずれを比較し、前進接触角およびその速度依存性を検証する。 2022年度は、従来測定されてこなかったPt等の高融点純金属における気液固三重点のGrowth angleの実測を当初の計画通りテトラアーク引上げ法を用いて実施し、当該パラメータを用いたメニスカス形状の計算を実施した。Pt等の高融点金属の結晶育成を行い、画像解析からGrowth angleを推定し、Growth angleがいずれも10°未満であることを明らかにした。これは、線径を穴径に漸近させるための必要条件である接触角との角度和条件に対して、Growth angleがほとんど寄与していないことを意味しており、接触角が増大する要因の必要性を明らかにするものであった。またDewetting μ-PD法における結晶径の正の速度依存性に対して、融液と坩堝壁面の満たす境界条件の観点から検討を行った。結晶育成時の投入電力量の制御から予測される固液界面位置の上昇に対して線径が増大する傾向が得られ、理論的に予測される固定端条件での挙動と一致したことから、境界条件が実験的に推定可能であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、Dewetting μ-PD法における境界条件は実験的に推定可能か、線径の引下げ速度依存性は動的接触角の速度依存性の影響によって説明できるか、合金化した際の線径変化の速度依存性はどのように変化するか、という学術的問いに対して、理論的に予測される挙動の実験的検証を実施している。2022年度は、従来測定されてこなかったPt等の高融点純金属における気液固三重点のGrowth angleの実測を当初の計画通り実施し、当該パラメータを用いたメニスカス形状の理論的計算を実施した。また2023年度目標であるDewetting μ-PD法による結晶育成を一部実施し、低圧・等速度育成状態での固液界面位置の上昇に対して線径が増大する挙動を見出し、理論的に予測される固定端条件での挙動と一致することを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は当初の計画通り、有限要素法を用いたμ-PD炉内の温度場の計算および、二色式放射温度計による結晶育成中の温度実測を行う。また、結晶育成速度の変化に対する線径の変化を画像解析によりリアルタイムにモニタリングし、得られた速度依存性をもとに、前進接触角の影響を明らかにする。2022年度にGrowth angleの測定が実施できたことで前進接触角の影響を分離することが可能となり、また投入電力量の変化に伴う固液界面位置の制御によって線径が変化する挙動を捉えられたことから、線径の速度依存性についても順調に取得できることが期待される。2023年度には、国内外での成果報告および論文化を予定している。
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