研究課題/領域番号 |
22K20504
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0403:人間医工学およびその関連分野
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
羽賀 健太 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (60962777)
|
研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 人工真皮 / 口腔粘膜線維芽細胞 / 機械的伸展刺激 / プライミング / マイクロアレイ / 再生医療 / 培養真皮 / 3次元培養 / 組織工学 |
研究開始時の研究の概要 |
難治性皮膚潰瘍の治療に用いられる培養真皮は、生体吸収性材料に新生児真皮線維芽細胞由来の3次元シートだが、再生医療製品は依然高価である。申請者は、歯科で日常的に廃棄される歯肉由来の口腔粘膜線維芽細胞と食用海産物の廃棄部分から精製される魚由来コラーゲンを用いて、大幅なコストダウンと口腔内適用も可能とする培養真皮を作製し、費用対効果の高い日本発の製品開発ができると考えた。 本課題では市販の多孔質魚コラーゲン足場材に口腔粘膜線維芽細胞を播種して作製した新規培養真皮に、物理的刺激プランミングと遺伝子タンパクの網羅的解析により、創傷治癒促進に関する機能的特徴/プロファイルを把握し、新規培養真皮開発を目指す。
|
研究実績の概要 |
皮膚線維芽細胞組み込み型の人工真皮はすでに製品化され市販されているが、その効果は思うように上がっていない現状がある。一方、口腔粘膜線維芽細胞組み込み型の人工真皮は現在までに製品化に至ったものはない。申請者は、一般に傷の治りが皮膚より早く、良好と言われている口腔粘膜由来の線維芽細胞を用いた人工真皮の開発を目指す。かつ、移植前に機械的(伸展:プライミング)刺激を加えることで、人工真皮としての機能亢進を目指し、本実験では、1) 皮膚線維芽細胞と口腔粘膜線維芽細胞で構成される人工真皮、2) 口腔粘膜線維芽細胞で構成される人工真皮において、伸展刺激を加えたものとそうでない製品の遺伝子発現を検索することで、将来的に製品化ができた際の、それぞれの人工真皮の機能的特徴を類推するために本実験を計画した。 使用するメニコン社製の培養細胞伸展システムShellPaに付属する細胞培養チャンバーには、3次元ゲルが収縮しないように底面に25個の突起が形成されているが、その突起の高さが不十分であることから、刺激の途中でゲルに収縮が起こる困難に何度も見舞われた。それでも用いるコラーゲンゲルの容積、埋入する細胞数、培地の量のバランスを試行錯誤し、できるだけ長期間に観察できる実験系のデフォルト条件の設定に最近到達した。条件として10x20x20㎜の底面に25個の突起をもつチャンバー内に、5x20x20㎜(=2mL)のコラーゲンゲルに700K個のp3の正常口腔粘膜線維芽細胞を包埋し、2mLの10%FBS入りDMEM培地を加え、1) 24時間静止状態、2) 持続刺激(24時間中3時間の10%の持続伸展)、3) 間歇刺激(24時間中3時間に10%の0.5ヘルツの間歇的刺激)の3つの条件で培養を開始できるようになった。この状態で4日間培養後にゲル内の口腔線維芽細胞からmRNAを抽出してマイクロアレイ解析を行った。(現在N=1,1例解析中)
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
使用しているメニコン社製の培養細胞伸展システムShellPaに実験期間の途中に不具合が発生したため実験を実施できない期間があったことが、最も大きな原因である。また、デフォルトの設定条件を決定するまで長期の試行錯誤を要してしまったことも一因であった。一方で、RNA抽出などの手技は問題なく実行できているので、一旦症例数が進めば、データの蓄積は堅実に行えると考えている。 しかしながら、1例だけではあるが、3次元コラーゲンゲル培養環境における口腔線維芽細胞の遺伝子発現パターンは、24時間の1) 無刺激(静止状態)、2) 持続刺激、3) 間歇刺激の3種類において、検索した2万以上の遺伝子においては、発現がほとんどない遺伝子が多い上、群間でも大きな違いは認めなかった。特に2)と3)の差は1)vs2)、1)vs3)より小さかった。また、有意に発現レベルが低下する遺伝子数は、1)vs2)3)において上昇する遺伝子より少なかった。一方、逆に顕著に認められたのは、1)vs2)3)において1)<2)<3)の順に有意に発現が認められた遺伝子として、数としては少ないが、PTGS2, SLC5A3, AKR1B1, MMP7, SGK1, DKK1、GK, ERFGであった。これらの遺伝子機能について詳細に検討を加え、人工真皮として利用する場合における創傷治癒への影響や人工真皮としての有意な効果があるのか、利点の有無を考察していく。
|
今後の研究の推進方策 |
2例目以降もこれらの遺伝子の変動に注目すると同時に、ELISAアッセイが可能なMMP7に注目し、分泌タンパクにも注目していく。また、24時間刺激後の細胞数の変化に関しては観察を行っていないので、MTTアッセイを行い、刺激の前後での細胞増殖の有無も検討を加える予定である。可能であれば、他のパターンの伸展刺激(総日数や刺激の周期と強度)についても設定したいし、皮膚線維芽細胞との比較も実施したい。
|