研究課題/領域番号 |
22K20512
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0403:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
豊内 秀一 大阪公立大学, 研究推進機構, 特任講師 (40851382)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 細胞内液液相分離 / 光圧 / 光濃縮 / タンパク質 / 液液相分離 / 光ピンセット / 細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、液液相分離によって細胞内に形成される非膜オルガネラが様々な生体現象に関わっていることが示され大きな注目を集めている。本研究では光圧による局所的光濃縮を利用した人工液液相分離ツールの開発を目指した基礎的研究を行う。光濃縮による液液相分離現象を、分子集合体から非膜オルガネラへと発展する階層構造から理解し、階層間のつながりやその時間スケールを明らかにする。さらには本研究で得られた化学的知見を基軸とし、生化学反応制御および細胞操作を可能とする新しい光技術へ発展させる。
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研究実績の概要 |
細胞内液液相分離(LLPS)によって形成される非膜オルガネラが様々な生体現象に関わっていることが示され大きな注目を集めている。一方で、人工的にLLPSを高い時空間分解能で確実に捉える方法は確立されているとは言えない。そこで本研究課題では、光圧によるタンパク質の局所的光濃縮を利用し、細胞内LLPSを「狙った位置」かつ「狙った時間」に引き起こす新しい人工LLPSツールの開拓を目指している。リゾチーム(LYZ)をモデルタンパク質とし、光圧によってLYZのLLPS誘起が可能か検証した結果、光照射下でLYZが高濃度に濃縮され、過渡的な高濃度ドメインが形成される事が明らかになった。この高濃度ドメインの境界部分では、タンパク質の濃度差が観測されないなど、濃度や温度の変化によって誘起される通常のLLPSとは異なる、光濃縮下に特異的なLLPSである事を明らかとし報告した(S. Toyouchi et al. APEX 2023)。この光濃縮下特異的なLLPSをより詳細に調べるために、LYZ集合体について顕微偏光ラマン散乱法を用いてタンパク質配向について調べた。また、クラウディング剤として知られるポリエチレングリコール(PEG)を添加し、光濃縮誘起LLPSにおける分子クラウディングの効果を調べた。その結果、光濃縮下でPEGが「つなぎ」のような役割を果たすことでLYZのLLPSを促進する事が明らかになった。また、異種微粒子と生体分子の混合系における光圧誘起のによる動力学制御にも取組み、細胞内人口液液相分離の目標達成に向けて別のアプローチから新規知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、タンパク質の光濃縮誘起LLPSの実証を行った。さらに顕微偏光ラマン散乱法を用いて、光濃縮誘起LLPSドメイン内外のタンパク質分子の配向について調べる事を試みた。しかしながら、ラマン散乱の低い感度および低時間分解のため、分子配向についての情報を得る事が困難であることが判明した。そのため、申請段階での研究計画を変更し、より高い感度と時間分解能が期待できる顕微蛍光分光のための装置設計し、光濃縮下での分子回転や揺らぎなどのダイナミクスを局所計測する事を目的とした光学系の構築を進めている。初年度では、自作の蛍光顕微鏡の組み立てを完了した。
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今後の研究の推進方策 |
顕微蛍光分光のための光学系を構築し、タンパク質の光濃縮下で観測される高濃度ドメイン内外での分子ダイナミクスについて調べる。LZYとは異なるタンパク質についても光濃縮誘起LLPSの実証を進める。クラウディング剤添加による効果をより詳細に調べる。また、細胞内での光濃縮誘起LLPSの実証を試みる。
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