研究課題/領域番号 |
22K20544
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0501:物理化学、機能物性化学、有機化学、高分子、有機材料、生体分子化学およびその関連分野
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
長谷川 誠樹 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (50962487)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | プラズモニック触媒 / 近接場 / プラズモン / 光触媒 |
研究開始時の研究の概要 |
貴金属ナノ構造体に励起されるプラズモン共鳴を用いたプラズモニック触媒におけるプラズモンの共鳴特性と触媒特性の関係を明らかにすることを目的とする。液中で動作する近接場光学顕微鏡を用いて,プラズモニック触媒として働く貴金属ナノ構造体の表面における電子状態を可視化し,触媒特性との関連を明らかにする。また,プラズモンを選択励起することによりプラズモニック触媒能を制御することを目指す。
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研究実績の概要 |
貴金属ナノ構造体に励起されるプラズモンを用いて化学反応を促進させるプラズモニック触媒は,エネルギーの効率的利用の観点から多くの研究が進められてきた。金ナノプレートには,共鳴特性(分極方向や空間特性)の異なる複数のプラズモンモードが励起されることが知られているが,各モードの触媒能については未だ不明である。本研究では,貴金属ナノ構造体に励起されるプラズモンの共鳴特性とプラズモニック触媒特性の関係を明らかにすることを目的とする。液中で動作する近接場光学顕微鏡を開発し,それを用いてプラズモニック触媒として働く貴金属ナノ構造体の表面における電子状態を可視化することにより,触媒特性との関連を明らかにする。また,プラズモンの選択励起を利用してプラズモニック触媒を制御することを目指す。2022年度は,金ナノプレート近傍におけるプラズモニック触媒反応の空間特性の可視化に取り組んだ。光照射により還元され,蛍光性に変化する分子を金ナノプレート近傍に分散したものを試料として用いた。開口型近接場光学顕微鏡を用いて光を照射し,プレート近傍の蛍光観察を行った。また,プレートに励起されるプラズモンを可視化するため,白色光源を用いて近接場透過像を測定し,得られた近接場蛍光励起像との比較を行った。サイズや形状の異なる複数の金ナノプレートについて測定を行った結果,一部のプレートでは,プラズモンの空間特性に関連する蛍光励起像が得られた。この結果は,空間選択的なプラズモニック触媒反応の進行を示唆する。しかし,現時点では,触媒反応の進行による信号増大とプラズモンによる蛍光増強効果との切り分けが不十分であるという問題があり,今後改善を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,貴金属ナノ構造体に励起されるプラズモンの共鳴特性と触媒特性の関係を明らかにすることを第一の目的としている。また,プラズモンの選択励起によりプラズモニック触媒能を制御することを第二の目的としている。第一の目的を達成するため,今年度は液中で動作する近接場光学顕微鏡の開発を計画していた。しかし,顕微鏡開発に必要な物品の納期が遅れており,今年度中にこれを達成することはできなかった。その一方で,当初計画していなかった固体基板上におけるプラズモニック触媒反応の空間特性の可視化に着手した。光照射により還元され,蛍光性に変化する分子を金ナノプレート近傍に分散したものを試料とし,開口型近接場光学顕微鏡を用いて光を照射しながら,プレート近傍における蛍光観察を行った。得られた蛍光励起像とプレートに励起されるプラズモンの空間特性を比較した結果,空間選択的なプラズモニック触媒反応の進行を示唆する結果が得られている。また,第二の目的に関連する研究としてプラズモンの選択励起の実現に着手した。ベクトルビームを励起源に用いた実験結果と新たに開発した電磁気学計算結果の比較から,プラズモン選択励起の実現を示唆する結果が得られている。上記内容から,当初の研究計画とは異なるものの,本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終的な目標は,液中で動作する近接場光学顕微鏡を開発し,それを用いて貴金属ナノ構造体近傍に励起されるプラズモンの共鳴特性と触媒特性の関係を明らかにすることである。そのため,2023年度は,2022年度に達成できなかった液中で動作する近接場光学顕微鏡の開発を計画している。その後,開発した顕微鏡を用いて,プラズモニック触媒反応中における貴金属ナノ構造体の表面電子状態を可視化することを計画している。サイズや形状の異なるナノ構造体に対して表面電子状態の可視化を行い,触媒反応が進行した箇所の空間分布と比較することで,プラズモンの共鳴特性と触媒能の関係を明らかにすることを目指す。また,当初計画しておらず,2022年度に着手した固体基板上におけるプラズモニック触媒反応における空間特性の可視化についても研究を進める。現時点では,プラズモンによる蛍光増強効果との切り分けが不十分であるという問題点がある。2023年度は系の最適化によってプラズモンによる蛍光増強効果との切り分けを行い,定量的な評価を目指す。最後に,励起場の変調によるプラズモンの選択励起を利用して,励起光の偏光特性制御を介したプラズモニック触媒の特性制御を計画している。変調した励起光を試料に照射しながら実験を行うことで励起光変調によるプラズモン制御を介した触媒特性制御の実現を目指す。
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