研究課題/領域番号 |
22K20548
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0501:物理化学、機能物性化学、有機化学、高分子、有機材料、生体分子化学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
稲垣 万貴 (鳥本万貴) 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 基礎科学特別研究員 (00844375)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 走査トンネル顕微鏡 / 金属表面 / 合金 / 化学反応 |
研究開始時の研究の概要 |
担持金属触媒の開発過程において、分子が吸着し反応する場である金属最表面の局所的解析を実験的に行うことは、触媒反応を制御する金属の性質を解明する上で重要性が高いといえる。本研究ではPd系合金表面を対象に、走査トンネル顕微鏡(STM)を軸とした実験および解析を行う。STM観測が可能な平滑な合金表面を作製し、反応性評価および合金表面の原子・吸着分子の局所的な構造・電子状態解析を行うことで、Pd系合金触媒の基礎的かつ本質的な知見を獲得することを目的とする。
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研究実績の概要 |
様々な化学反応に使用される担持金属触媒では、二種、あるいは三種以上の金属を混合させた合金触媒の研究が盛んであり、高活性・高選択性や耐久性向上などの利点が数多く報告されている。しかし一方で、合金化することにより金属の性質がどのように変化し、それにより吸着する分子の性質がどのように変化するのか、といった根本的な疑問に対する原子・分子レベルでの基礎的知見はいまだ十分ではない。そこで本研究では、金属表面および吸着分子の原子・分子レベルの測定・解析が可能である走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて、合金表面の特性を解明することを目標とした。 2022年度は、研究の第一段階としてPd単結晶表面での検討を進めた。まず、新規に購入したPd単結晶基板をArイオンスパッタリングおよびアニーリングにより清浄化する条件を探索した。そして得られたPd単結晶基板でのSTM観測を行い、表面の不純物が無視できるほど少ないことを確認した。次に、プローブ分子としてCO分子を基板に吸着させた。CO分子はチャンバー内にバリアブルリークバルブから微量導入し、基板上で分子が孤立して存在していることを確認した。CO分子が基板上に吸着している場所でPdの原子像の取得に成功し、COの吸着サイトを特定することができた。さらに、電圧値の大きさを変化させながらパルスを印加して、トンネル電子が引きおこすCOの反応挙動を評価した。来年度は合金表面表面での検討を行うことで、合金化による金属電子状態の変化および分子の吸着性の変化を、原子・分子レベルで評価していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はPd単結晶のクリーニングに予想以上の時間がかかってしまったが、Pd単結晶基板における検討をほぼ進めることが出来た。清浄化した基板上の原子像の取得に成功し、CO分子の吸着サイトを特定することが出来た。さらに、Pd基板上へのZn原子の担持条件、焼成条件の探索も行い、PdZn合金表面を作成することに成功している。この結果をもとに来年度では合金表面上における単分子の研究をすすめていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、Pd単結晶基板での検討をすべて終えることができたので、来年度はPd系合金表面における検討に着手する。まず、Pd単結晶に異なる金属を真空蒸着させ、アニールすることでPd系合金表面を作製する。STMでチップと基板間にながれるトンネル電流の大きさには、基板の電子状態密度の項が入っており、そのため電圧を変化させて測定したトンネル電流をVについて微分することで得たスペクトルには資料の電子状態密度が反映される。この手法を走査トンネルスペクトロスコピー(STS)というが、本年度は合金表面におけるSTS観測に挑戦し、合金表面での電子状態を評価する。
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