研究課題/領域番号 |
22K20568
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0601:農芸化学およびその関連分野
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
安掛 真一郎 東京農工大学, 学内共同利用施設等, 特任助教 (30963251)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | バイオフィルム / バイオスティミュラント / 植物成長促進微生物 / Enterobacter |
研究開始時の研究の概要 |
植物の環境ストレスを緩和させる機能を有するバイオスティミュラント(BS)資材は、世界的規模で環境低負荷型・持続可能な農業を実現するためには欠かせない。細菌性バイオフィルムの主成分であるEPS(Exopolysaccharide / Extracellular polymeric substances)は、BS資材になり得る効果(難溶性リンの可溶化と環境ストレス緩和機能)を有することが知られているが、核となる物質の構造や作用機構はまだ明らかになっていない。上記のメカニズムを明らかにするため、種々の細菌から抽出・精製したEPSと植物応答の因果関係を調べていく。
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研究実績の概要 |
細菌が産生するバイオフィルムの主成分であるEPS(細胞外高分子物質)は、細菌自身を保護したり植物や土壌粒子と吸着したりする役割を持つ。多糖の他にタンパク質、核酸、脂質、膜小胞など様々な物質を含んでおり、近年そのEPSによって植物の成長促進、熱や乾燥などのストレス耐性の付与、病原菌に対する防御などの効果がもたらされると報告されてきている。しかし、詳細な作用機構は全く解明されていない。細菌が産生するEPSの植物への寄与を明らかにすることで、バイオスティミュラント資材としての利用価値にも貢献することができる。 我々は、東京農工大学の試験圃場の土壌を用いて栽培した様々な作物の根圏から、有用な植物成長促進微生物30株を保有している。それらの中から、EPS産生能が高い菌株を調べたところ、6株が選抜され、驚くことに全ての菌がグラム陰性菌のEnterobacter属細菌であった。そこで、このEnterobacter属細菌から抽出生成されたEPSを用いて、イネへの投与試験を行なった。プラントボックスにイネ種子を播種し、それと同時にEPSを投与した。100マイクログラムのEPSを投与した際よりも10マイクログラムのEPSを投与した際に、1か月後のイネ生育量が増強されていることが分かった。濃度依存的ではないということは、EPSが単に養分として利用されているわけではなく、何らかの植物応答を誘導している可能性が高い。現在はこの応答に着目したトランスクリプトーム解析、さらに非生物ストレス条件下でのイネに対する効果を確認中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書内におけるEPS産生能の評価と精製、そして最初の植物アッセイを終えている。現在は環境(非生物)ストレスを緩和する効果を確認中である。遺伝子発現に関しては、当初の予定ではRT-qPCRにより非生物的ストレスに関与する標的の遺伝子のみに着目する予定だったが、植物全体でどのような応答が生じているのか網羅的に観察するため、トランスクリプトーム解析を行うことに予定を変更した。効果の確認と候補遺伝子が決まり次第、EPSの画分化と画分を用いた植物アッセイを開始する。
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今後の研究の推進方策 |
既に記載したように、今後は現在のトランスクリプトーム解析とEPSが緩和する非生物ストレス条件を確認中である。このデータが揃い次第、これまでのデータについて論文を執筆する予定である。また候補遺伝子と栽培条件を確認後、EPSの画分化とその投与試験を開始する。効果のある画分が明らかになった後、物資の同定を試みる。また、EnterobacterのEPS変異体を作成予定であり、EPSを産生する野生株と産生しない変異株で、植物への効果にどのような変化をもたらすのか調査予定である。
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