研究課題/領域番号 |
22K20587
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0602:生産環境農学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
伊藤 虹児 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 研究員 (70828863)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 水田土壌 / 異化的ヒ酸還元酵素遺伝子 / メタトランスクリプトーム / 黒ボク土 / 土壌RNA / 鉄還元細菌 / 硫酸還元細菌 / ヒ素 / 水田 / 土壌微生物学 |
研究開始時の研究の概要 |
コメを生産する水田は還元条件であるため、土壌中のヒ素(As)がイネに吸収されやすい亜ヒ酸(As(III))へ変化する。しかしAs(III)の生成と溶出が土壌により異なる要因は、土壌理化学性から十分説明できない。それは、As動態への土壌微生物の寄与が大きいためである。しかし日本の水田土壌中でAs動態に関与する微生物群集構造やAs代謝遺伝子の機能レベルは分かっていない。本申請研究では日本全国の水田土壌の微生物群集構造解析とAs代謝遺伝子発現解析から、還元条件下でのAs(III)溶出の決定因子と作用機序を明らかにすることを目的とする。
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研究成果の概要 |
本研究では国内の水田土壌を湛水培養し、そこから抽出したRNAを用いてメタトランスクリプトームによるAs代謝遺伝子(arrA, ttrA, arsM)の発現解析を行なった。異化的ヒ酸還元酵素遺伝子としては、arrAよりもttrAの発現量が多かったことから、当該遺伝子がAsの還元溶解に関与していることが示唆された。主なttrAの発現宿主は土壌ごとに異なったものの、鉄、或いは硫黄還元細菌として知られるグループがAs還元溶解の鍵となる微生物であることが示唆された。さらに、多様な微生物がarsMを発現し、その発現量が3日目から9日目にかけて5 ~ 13.2倍に増加することが示された。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究では日本の水田土壌中で土壌溶液中Asの供給源となり得る異化的As(V)還元酵素遺伝子として、これまで世界的に研究されてきたarrAではなく、ttrAが高度に転写されていることを見出した。ttrAを発現する微生物は鉄あるいは硫酸還元細菌として知られるグループであることが明らかとなった。また、As呼吸によってAs(III)が蓄積したタイミングで多様な微生物がAs(III)メチル化遺伝子arsMを発現することが明らかとなった。これらの結果は国内の水田においてAsの生物地球化学的循環を駆動する微生物の指標を与えるものであり、将来的にコメのヒ素汚染リスクを予測する上で有用な情報となる。
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