研究課題/領域番号 |
22K20589
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0603:森林圏科学、水圏応用科学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
辺 浩美 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (30962758)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | トロンボポエチン受容体 / レクチン / 糖鎖 / 海洋天然物 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで応募者はミクロネシア産海綿に含まれる新規フコース結合性レクチンThCが,造血サイトカインのトロンボポエチンTPOと類似した活性を示すことを発見した.さらにThCのTPO受容体に対する作用機構が全く新しいものであることを立証した.加えて,ThCに酷似した構造を持つバクテリアレクチンPA-IILが,ThCに比べ非常に弱い活性を持つことを見出し,これらの構造活性相関の理解がTPO受容体の新しい活性化機構を解明する鍵であると考えた.本研究ではThCの変異体やバクテリアゲノムに埋もれているThC類似タンパク質を発掘し,構造活性相関を評価することで新規のTPO受容体活性化機構の全貌解明を目指す.
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研究実績の概要 |
ThCのアミノ酸配列と類似した配列を持つタンパク質をBlast検索すると多くのバクテリア由来タンパク質がヒットするが、これらのほとんどはhypothetical proteinであり、タンパク質としての実態は不明である。そこで、これらのhypothetical proteinを大腸菌を用いて組み換えタンパク質として発現させ、活性を評価することを試みた。まず、ThCと配列相同性が特に高い7種のバクテリア由来タンパク質を調製し、これらのサンプルがThCと同様のTPO様活性を示すか培養細胞を用いて評価した。その結果、いずれのレクチンもThC以上もしくは同程度の活性を示すものは無く、ほとんどが数十分の1程度の活性に留まった。この原因として、一部は溶液中で沈殿が生じやすく、不安定なタンパク質である可能性が挙げられるが、アミノ酸配列、立体構造共に類似しているにもかかわらず、なぜThCのみが突出して強い活性を示すのかは不明である。 また、本研究のベースとなる海綿由来新規レクチンThCによるTPO受容体活性化の詳細について論文を発表した。本報告では、ThCによるTPO受容体活性化機構の詳細を明らかにしたことに加え、ThCとPseudomonas属由来レクチンPA-IILの構造を詳細に比較し、活性の差が生じる原因を考察している。これは本研究内容とも深く関連するものであり、今後PA-IIL以外の発現レクチンも含めて比較することでThCのみが強い活性を示す理由について検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究室ではこれまで大腸菌を用いた組み換えタンパク質の発現の経験が無かったため、初めにこれらの実験を行う環境を整え、共同研究先で実験を教わった。また、発現したバクテリア由来レクチンのTPO様活性の評価を行った後、ThCの1アミノ酸を置換した変異体10種程度についても活性を評価した。その結果、ある変異体において活性を維持しているにもかかわらず、細胞の凝集が天然型と比較し抑制されているものを見出した。ThCは溶液中では主にホモダイマーとして存在し、2カ所のフコース結合部位を有する。この2つの糖結合部位を用いてTPO受容体の糖鎖へ結合し、2分子の受容体を架橋することで活性化へと導く。一方で、ThCを細胞へ添加した際に、TPO受容体以外の細胞表面糖鎖とも非特異的に結合し細胞同士を架橋するため、細胞の凝集が観察される。これはThC以外のレクチンを細胞へ添加した際にもよく観察される現象であるが、医薬品としての利用を考えるとこの現象は弊害となり得る。したがって、凝集活性が低いThC変異体は非常に珍しい発見であり、今後の応用に有用である可能性がある。 また、興味深いことにThCとは異なるタイプのレクチンが、自身ではアゴニスト活性を示さないものの、TPOと併用することでTPOの活性を増強することを見出した。これまでTPO受容体アゴニストは内因性リガンドであるTPO以外に製薬会社等によっていくつか報告されており、ThCもその一つであるが、単独ではアゴニスト活性を示さずTPOの活性を増強する化合物の存在はこれまで報告が無く、今後、TPO以外の既存アゴニストとの相乗効果などより詳細を調べていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
組み換えタンパク質として発現したThCと配列相同性の高いバクテリア由来レクチンのTPO様活性は予想に反し、ThCと比較して弱い活性に留まった。今後は、はじめにウサギ赤血球を用いて血球凝集活性を評価し、TPO様活性と糖との結合能の間に相関があるのかを検討する。次に、下流のシグナルの活性化について評価を行う。アゴニストの種類、受容体への結合部位などの違いが、下流シグナルの違いを引き起こし、最終的には細胞の自己増殖/分化の方向性が変わるという最近の報告がある(Cui et al., 2021, PNAS)。したがって、本研究においてもThCに類似した化合物であっても、僅かな差がシグナリング、細胞増殖の相違をもたらしている可能性が考えられる。 また、ThCタイプレクチンと血液疾患の原因分子CALR変異体による受容体活性化の特徴を比較する。最近、CALR変異体による細胞のガン化の機構として、受容体活性化によるシグナリングが異常に長時間持続することが鍵であると提唱された。通常、TPOにより活性化された受容体は細胞内にシグナルを伝達した後、速やかに細胞内に取り込まれ、シグナルが停止する。これは血中TPO量の調節や過剰なシグナリングを防ぐための重要な制御機構である。そこで本研究では、各種ThCタイプレクチンによる受容体活性化シグナルの持続時間を、ウェスタンブロットを用いて調べる。これにより、シグナルの異常な持続がCALR変異体に特異的な現象なのか、受容体糖鎖を介した活性化による共通点なのかを明らかにする。 以上の実験を行うことでThCおよびバクテリアフコース結合性レクチンの詳細な構造―活性相関に迫る。
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