研究課題/領域番号 |
22K20600
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0604:社会経済農学、農業工学およびその関連分野
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
斎藤 嘉人 新潟大学, 自然科学系, 助教 (90964990)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 光多重散乱 / 豆腐 / 散乱 / 微細構造 / 画像解析 |
研究開始時の研究の概要 |
近年多様化する食の需要への対応と製造ロス削減の両立が求められる中,豆腐製造では凝固中の微細構造形成を簡便かつ高精度に測る技術が切望されている。従来の“1波長”での散乱光計測に対し,本研究では新たに「3波長同時入射型」のレーザ散乱による豆腐の微細構造の緻密さの非破壊推定に取り組む。拡散理論式を介した3波長の光学応答から微細構造の緻密さを推定し,凝固後の顕微鏡観察による定量値で検証を行う。
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研究実績の概要 |
本研究では,豆腐製造における豆乳の凝固過程の非破壊計測,および完成した豆腐の物理的品質の客観的かつ非破壊的な計測を目指し,新たに「3波長同時入射型」のレーザ散乱による豆腐の微細構造の緻密さの非破壊推定に取り組むことを目的としている。拡散理論式を介した3波長の光学応答から微細構造の緻密さを推定し,凝固後の顕微鏡観察による定量値で検証を行うことを最終到達目標としている。令和4年度の研究進捗は下記のとおりである。 [I]3波長同時入射型の散乱光学系の構築:試料の光散乱の強さを表す散乱係数を3波長で同時に計測できる光学系の構築を行った。使用した波長は,405 nm,520 nm,635 nmの3波長であり,これら波長の可視光レーザを光源に用い,斜め入射式の散乱光測定系を構築した。検出には可視領域に感度を持つカラーカメラを用い,RGBの各チャネルで観測される輝度値で各波長の散乱光の空間分布を検出できる光学系とした。現在,光散乱測定における標準品であるイントラリピッドを用い,線形性評価を行っている段階である。 [II]凝固状態の異なる豆腐の基礎的な光学特性の検証:本研究の最終的な到達目標である,3波長の光学特性に基づく凝固状態の異なる豆腐の品質評価の実現可能性を探るため,吸収と散乱の2つの特性で代表される光学特性の変化を検証した。可視領域に比べ比較的透過率の高い近赤外分光法を用い,凝固度合いの異なる豆腐を対象に透過測定を用いた光学特性の評価を行った。 その結果,凝固温度や凝固時間が増加するほど豆腐の透過率は減少する結果が得られた。得られた吸光度にから吸収と散乱の成分に切り分けたところ,散乱の増加が支配的であることが明らかとなった。この結果は,2022年12月に開催された国際学会であるThe XX CIGR World Congress 2022にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の独創的な点である,3波長同時入射型のレーザ散乱測定を実施するための実験系の構築は完了しており,また凝固状態の異なる豆腐の基礎的な光学特性の検証も同時並行で進め実現可能性を検証できているため,当初の計画通り順調に進展している。 研究実績の概要[I]に示した中で,本来1年目に完了する計画であった点は光学系の妥当性の検証である。当初,1年目の前半で導入予定であった分光光度計(本学の基盤的な設備)の納品が2022年12月に遅延した関係で,1年目のうちに光学系の妥当性検証まで完了させることができなかった。現在,標準品を用いた光学係数の妥当性評価を行っている段階である。 一方,研究実績の概要[II]に示した豆腐の基礎的な光学特性の検証は,本学着任前の所属であった京都大学の装置を活用することで順調に進行でき,当初の想定以上に進展した。 以上より,本研究の進捗を総合的に判断し,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
①3波長同時入射型の光学系の妥当性評価 2年目の前半で,1年目のうちに完了できなかった光学系の妥当性検証を行う。405 nm, 520 nm,635 nmの各波長で,標準品であるイントラリピッドの等価散乱係数を計測し,既設の分光光度計から得られた散乱係数のデータと比較することで測定値の妥当性を確かめる。
②散乱光の波長応答に基づく豆腐の微細構造の緻密さ推定 ①で構築した光学系を用い,異なる凝固剤濃度・凝固温度で調製した豆腐の散乱光測定を行う。標準品の測定と同様に,豆乳・豆腐を対象に3波長の等価散乱係数を測定する。その後,散乱光計測に用いた豆腐試料に化学的前処理および凍結乾燥処理を行い,電子顕微鏡(SEM)観察を行う。SEM画像で観測される豆腐中の微細構造の画像解析により,微細構造の緻密さの定量的指標である空隙率,孔のサイズ,孔の数を実測する。そして,散乱光の波長応答と豆腐の微細構造の緻密さ指標の比較を行い,微細構造の緻密さを推定するための散乱応答のパラメータを検証する。本検証は①の光学系の構築が終わり次第,遅くとも2年目の中盤から着手することとし,各種消耗品の調達と,SEM画像撮影に協力いただく研究者との調整を行う。本研究成果の論文投稿を取りまとめ,2年目終了時に国際誌へ投稿する予定である。
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