研究課題/領域番号 |
22K20603
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0604:社会経済農学、農業工学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
横山 岳 九州大学, 農学研究院, 助教 (80962472)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 光合成 / 気孔コンダクタンス / 葉肉コンダクタンス / 葉面境界層コンダクタンス / イチゴ / 温室 / 微気象 / 環境調節 |
研究開始時の研究の概要 |
温室作物生産においては,作物の生育および収量を決定づける生理生態反応である光合成を,環境調節(補光,CO2施用 etc.)によって通常レベルより高い状態に促進させることが試みられている.同時に,営農コストや環境負荷削減の観点から効率的に光合成を促進する環境調節技術の開発も求められている.効率的に光合成速度を向上させる手段として,光合成を構成する各プロセスのうち,光合成速度を最も制限しているプロセス(ボトルネック)を最適化することが挙げられる.そこで本研究では,光合成を構成する各プロセスがそれぞれどの程度光合成速度を制限しているかを定量的に評価することを試みる
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研究実績の概要 |
温室作物生産においては,作物の生育および収量を決定づける生理生態反応である光合成を,環境調節によって通常レベルより高い状態に促進させることが試みられている.同時に,営農コスト削減の観点から効率的に光合成を促進する環境調節技術の開発も求められている.効率的に光合成速度を向上させる手段として,光合成を構成する各プロセスのうち,光合成速度を最も制限しているプロセスを最適化することが挙げられる.そのためには,光合成を構成する各プロセスがそれぞれどの程度光合成速度を制限しているかを定量的に評価する必要が有る.そこで本研究では,これまで屋外で生育している植物を中心に適用されてきた光合成制限要因の定量的解析手法を温室作物に適用可能な形に拡張し,温室作物の光合成速度が“どのような要因”で“どの程度”制限されているかのかを定量的に明らかにすることを目的とした.まず,予備実験として,従来屋外で生育している植物に用いられてきた光合成制限要因の定量的解析手法を,温室イチゴに適用することを試みた.その結果,中程度の環境ストレス条件においては,温室イチゴの光合成は主に気孔律速により制限された.環境ストレスの程度が強くなるにつれて,温室イチゴの光合成を制限する主要因は,気孔律速に加えて葉肉律速となった.以上の結果から,温室イチゴの光合成の制限要因は,環境条件の違いに起因する環境ストレスの強度によって変化することを明らかにした.次に,温室内のような微風速環境においては,葉と大気の摩擦によって生じる葉面境界層コンダクタンスが低下することで,光合成を制限し得ることに着目した.葉面境界層コンダクタンスを計測するために,模擬葉と呼ばれるセンサを作成した.計測の結果,微風速環境においては,強風環境と比較して葉面境界層コンダクタンスの減少により大気から葉面への二酸化炭素の拡散が著しく制限されることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は,これまで屋外で生育している植物を中心に適用されてきた光合成制限要因の定量的解析手法を温室作物に適用可能な形に拡張し,温室作物の光合成速度が“どのような要因”で“どの程度”制限されているかのかを定量的に明らかにすることである.そのためには,まず,葉面境界層コンダクタンスを考慮した光合成制限要因の解析手法を構築する必要がある.葉面境界層コンダクタンスを計測するためには,自作のセンサを作成する必要があるが,既にセンサの作成は完了している.また,自作のセンサを用いて構築した温室作物に適用可能な光合成制限要因の定量的解析手法を実際に温室イチゴを対象に適用している.したがって,本申請課題の目的をほとんど達成している状況である.今後は,1年目と異なる季節などに同様の実験を繰り返しデータを蓄積する.同時に1年目に完了した実験に関する論文投稿を進める.既に予備実験の結果が査読付き国際誌1報掲載されている.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に記載した目的をほぼ達成している.今後は,1年目と異なる季節などに同様の実験を繰り返しデータを蓄積する.特に,温室内の気温低下を防ぐために,温室の換気が著しく制限されるために,温室内の風速が極めて低下する冬季を対象に集中的に実験を行うよていである.また,温室内の風速環境改善に向けた知見を得るために,温室内で循環扇などを稼働させた条件と稼働させていない条件などで実験を実施する予定である.同時に国際的に著名なジャーナルへの掲載を目指し,データ解析および論文執筆をすすめる.
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