研究課題/領域番号 |
22K20612
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0605:獣医学、畜産学およびその関連分野
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
本多 慎之介 京都大学, 農学研究科, 助教 (60964484)
|
研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | トランスポゾン / 受精卵 / 胚性ゲノムの活性化 / キメラ転写産物 / 哺乳類 / 進化 / GTICT-seq / ロングリードシーケンス / キメラmRNA / 哺乳類受精卵 / CDS / ロングリードシーケンサー |
研究開始時の研究の概要 |
哺乳類受精卵ではトランスポゾンが多く発現し、発生過程における胎盤組織への分化に関与していると考えられている。受精卵においてトランスポゾンは下流にある宿主の遺伝子を巻き込んでキメラmRNAを転写するが、その機能は未知なものが多い。本研究では、ロングリードRNA-seqによってキメラmRNAの完全長ライブラリー作製を行うと同時に、低分子翻訳阻害剤とペアリードシーケンスを用いた新手法であるGTICT-seqを開発することでキメラmRNAの翻訳領域を網羅的に同定する。本研究によって、哺乳類受精卵でのトランスポゾンの役割を解明し、家畜繁殖や医療における生殖補助技術の改善を目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究では、哺乳類ゲノムの約40%を占めるトランスポゾンと生命最初の分化である胎盤組織の分化制御の関連を明らかにすることを目的とする。哺乳類受精卵ではトランスポゾンが多く発現し、発生過程における胎盤組織への分化に関与していると考えられている。受精卵においてトランスポゾンは下流にある宿主の遺伝子を巻き込んでキメラmRNAを転写するが、その機能や翻訳領域は未知なものが多い。 トランスポゾンはゲノム上に多数存在するため、ショートリードシーケンスを用いた従来のRNA-seqでは転写産物の網羅的解析は難しい。また、キメラmRNAはスプライシングを行うことが知られており、完全長ライブラリーは未だ構築されていない。そこで、ロングリードRNA-seqによってマウスおよびウシ受精卵におけるキメラmRNAの完全長ライブラリー作製を行う。 キメラmRNAの多くは5’末端の配列が変化しているため翻訳開始コドンも移動すると考えられるが、キメラmRNAの翻訳領域に関する報告は少ない。そこで、低分子翻訳阻害剤とペアリードシーケンスを用いた新手法であるGTICT-seq(Global Translation Initiation on Chimeric Transcripts sequencing)を開発することでキメラmRNAの翻訳領域を網羅的に同定する。また、マウスとウシで共通の新規翻訳領域を持つキメラmRNAについて、トランスポゾンのみをノックアウトしたマウス受精卵を作成し、発生や着床能への影響を確認する。 本研究によって、従来の手法では解析が困難であったキメラmRNAの翻訳領域の解析を可能にすることで、哺乳類受精卵でのトランスポゾンの役割を解明し、家畜繁殖や医療における生殖補助技術の改善を目指す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度では、oxford nanopore社のロングリードシーケンサーであるMinIONを用いてマウス2細胞期後期胚の高カバレッジロングリードRNA-seqを行い、通常のRNA-seqでは困難であったキメラmRNAの完全長ライブラリーの構築を試みた。しかし、マウス受精卵からとれるRNA量には限界があると同時に、従来の方法ではRNAを回収する際にロスが生じることから十分な量のRNAを集めることに難航し、十分な解析結果を得るには至っていない。そのため、バックアッププランとして受精卵に似た性質を持つES細胞の培養を開始し、ES細胞の中に一定の割合で存在することがわかっている受精卵2細胞期と同じ遺伝子発現パターンを示す2細胞期様細胞(2 cell like cell: 2CLC)の分取を進めている。 低分子翻訳阻害剤とペアリードシーケンスを用いたGTICT-seqの開発については、現在ES細胞を用いて確立を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度では、マウスおよびウシ受精卵やES細胞を使用した高カバレッジのロングリードRNA-seqを行い、キメラmRNAの完全長ライブラリーの構築を行う。マウス受精卵は既に報告があるが、ウシ受精卵についてはロングリードRNA-seqの報告はないため、ウシ受精卵に特異的なキメラmRNAの解析を行い、令和5年度中に国際誌に論文を発表する予定である。 上記研究と同時に、マウス胚性幹細胞を用いてRNAとリボソームのクロスリンク条件検定およびリボソームを翻訳開始コドンに停留させることのできる低分子翻訳阻害剤LTMの濃度検定を行い、LTMとペアリードシーケンスを用いた新手法であるGTICT-seq法の開発および最適化を行う。少数の細胞(1000細胞程度)からの解析が可能であった場合は、マウスおよびウシ受精卵を用いてGTICT-seqを行い、他の手法では解析が困難であるキメラmRNAの翻訳開始コドンおよび翻訳領域を同定する。キメラmRNAからの翻訳は何らかのRNA結合タンパク質で制御されている可能性があるため、得られた翻訳開始コドン付近の共通モチーフ配列の探索も行う。受精卵を用いたGTICT-seqによる翻訳領域の解析は令和5年度中に終了する予定である。また、GTICT-seqのデータを用いてマウスとウシで共通の新規翻訳領域を持つキメラmRNAを探し、マウス受精卵にCas9およびgRNAを導入することでキメラmRNAを転写するトランスポゾンをノックアウトした受精卵を作成する。作成した受精卵は胚盤胞期まで体外培養を行い、発生や細胞分化への影響を確認する。偽妊娠雌マウスへの胚移植も行い胎盤形成や着床能への影響を評価する。
|