研究課題/領域番号 |
22K20622
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0701:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
吉原 正仁 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (70807065)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | エンハンサー / プロモーター / 転写制御 / 疾患関連SNP / 神経分化 / 遺伝子発現 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、多くの疾患関連一塩基多型(SNP)が同定されてきたが、疾患関連SNPによる疾患発症の機序は、その殆どが明らかとなっていない。疾患関連SNPは、遺伝子発現制御において中心的な役割を担うエンハンサー領域に濃縮している。しかし、これまでのエンハンサー領域の同定手法は感度・解像度ともに充分でなく、また、エンハンサーの標的となる遺伝子の同定が困難である。 本研究は、新規手法を用いて、ヒト神経分化段階における遺伝子発現制御機構を明らかにし、神経疾患関連SNPが遺伝子発現に与える影響を網羅的に解明することを目的とする。これにより、神経疾患の病態解明および新たな治療法の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、ヒト神経分化モデルとして、中脳由来神経前駆細胞株 (LUHMES)を使用し、神経分化過程におけるプロモーター・エンハンサーの制御地図を完成すること、ならびにゲノムワイド関連解析(genome-wide association study; GWAS)データとの統合解析により、エンハンサー上に存在する疾患関連遺伝子多型が遺伝子発現に与える影響を明らかにすることである。 初年度となる当該年度は、LUHMESの分化誘導後1日目、3日目、6日目の細胞について、Cap analysis of gene expression (CAGE)法を用いてプロモーターの活性変動の計測を行い、さらに同じタイムポイントの細胞についてNative Elongating Transcript (NET)-CAGE法を用いて、エンハンサー領域の網羅的同定および活性変動の計測を行った。我々は以前、single-cell tagged reverse transcription RNA-sequencing (STRT RNA-Seq)を用いてLUHMESの分化誘導段階におけるトランスクリプトーム解析を行ったが (Lauter, Coschiera, Yoshihara et al., J Cell Sci, 2020)、CAGE法によっても同様の傾向が観測された。一方、エンハンサーについては、これまでにFANTOM5プロジェクトなどで同定されていない、約3万の新規エンハンサー候補領域が同定された。転写因子の結合モチーフエンリッチメント解析を行ったところ、プロモーター領域とエンハンサー領域で異なる傾向が観察された。 さらに、疾患関連遺伝子多型とエンハンサー領域の統合解析により、パーキンソン病や統合失調症などの神経・精神疾患関連遺伝子多型が、新規エンハンサー候補領域に濃縮することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、神経分化過程におけるプロモーター・エンハンサーの網羅的活性変動測定ならびにエンハンサー領域の網羅的同定に成功したため、CAGE法・NET-CAGE法を用いた解析はほぼ完了したと言える。 さらに、約3万の新規エンハンサー候補領域を同定し、これらの領域にパーキンソン病や統合失調症などの神経・精神疾患関連遺伝子多型が濃縮することを明らかにしたため、順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
エンハンサー領域を同定できても、それらの標的遺伝子はNET-CAGE法単独では推測できないため、HiCap (Capture Hi-C)法を用いた、高次クロマチン構造解析を進行中である。いくつかの新規エンハンサー領域とその標的候補遺伝子については有意な相互作用が認められたため、現在、ゲノム編集技術(CRISPR遺伝子活性化システム)を用いた、標的候補遺伝子の発現制御の検証実験を進めている。 今後、さらにプロモーター・エンハンサー間の相互作用解析を進め、当初の目的である制御地図の完成を目指す。
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