研究課題/領域番号 |
22K20640
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0701:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
西尾 天志 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (70964138)
|
研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | DNA高次構造 / 遺伝子発現活性 / 水性二相系 / 長鎖DNA / 遺伝子発現 / 水/水相分離液滴 / 細胞モデル |
研究開始時の研究の概要 |
塩基配列情報から多様な形態・機能の細胞を適材適所に発現させるメカニズムは未解明である。これに関して、DNAのメチル化やヒストン修飾等、DNAの変化をnmレベルで調べた研究が急増してきている。しかしながら、nmから数十cmに至る階層的な視点でのゲノムDNAの動的な変化(高次構造)と機能との関連を追究する研究は、その重要性にも関わらず遅れている。本研究では、高分子の水/水相分離によるミクロ液滴を用いて、内包されたゲノムサイズDNAを一分子レベルで直接観察可能な細胞の実空間モデルを創出し、細胞モデル内におけるDNAの高次構造変化が遺伝子発現活性に及ぼす影響を究明する。
|
研究実績の概要 |
ポリエチレングリコール(PEG)とデキストラン(DEX)の水性二相系による微笑液滴を用いた細胞モデルの構築を進めた。研究を進める中で、PEG/DEX液滴に内包する長鎖DNAが高濃度となる時、イオン条件に応じてDNAの高次構造や空間配置が変化することによって、非球形の液滴が創出されるといった、予想外に興味深い結果が得られたため、これに注力した研究を行った。これについて、実験と理論の両面から研究を推進し、液的の粘弾性といった材料特性について定量的な評価を行った。 同時に、細胞モデル構築後に細胞モデル内外の場の条件を変化させるファクターの候補探索として、in vitro実験系での予備的な実験も引き続き進め、抗がん剤を用いた研究から、予想外に興味深い以下の結果が得られたため、こちらにも注力して研究を行った。 ポリアミン(スペルミン)によって、遺伝子発現活性を様々に制御した条件下で、無細胞系遺伝子発現に対する抗がん剤ダウノマイシン(DM)の作用を調べた。その結果、低濃度DM存在下での弱い発現促進と、DM濃度依存的に引き起こされる発現の抑制という二相性の効果が観察された。さらに、原子間力顕微鏡により、ゲノムサイズDNAの高次構造に対するDMの作用を調べたところ、DM低濃度ではDNAの伸張を引き起こし、一方、高濃度ではスペルミンによって形成されたFlower-like structureを破壊することが明らかにした。DMが引き起こすDNA高次構造あるいは二重鎖切断によって遺伝子発現活性が影響を受けるという本研究成果は、従来の研究では知られることの無かった、DMのDNAへの直接的な作用を明らかにした新規性の高いものとなっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
PEG/DEX液滴に無細胞系遺伝子発現系を実装する過程で、長鎖DNAを高濃度に内包させた際に、液滴内において一分子レベルでDNAを観察した場合とは異なる、興味深い結果が得られ、その究明を進めたため。 また、細胞モデル構築後に細胞モデル内外の場の条件を変化させるファクターとして用いる候補について、in vitro実験系での予備的な実験を進めた結果、in vitroの 実験においても当初想定していた以上に興味深い結果が得られ、それらの究明を進めたため。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、PEG/DEX液滴系およびin vitro実験系の両方で予想外に興味深い結果が多く得られた。そのため、今後の研究の推進方策として、得られた成果の国際論文誌への投稿を進める。同時に、これらの研究成果を、細胞モデルを用いた実験系と組み合わせて新しい研究を展開していきたいと考えている。
|