研究課題/領域番号 |
22K20651
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0702:細胞レベルから個体レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
Kozgunova Elena 名古屋大学, 高等研究院(理), 特任助教 (90786120)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ヒメツリガネゴケ / CRISPR遺伝子編集 / 細胞分裂 / CRISPR/Cas9 / コケ / 植物 |
研究開始時の研究の概要 |
運動性のある動物細胞とは異なり、多くの植物細胞は硬い細胞壁の中に籠もっており、細胞分裂の際に生じたエラーは、その後に修正することができず、植物の発達を妨げることになる。植物は動物とは異なる細胞分裂機構を発達させてきたというのが長年の仮説である。一方で、植物の細胞分裂に関する知識の多くは、動物の制御遺伝子のホモログの機能解析により得られている. そのため、植物特有の細胞分裂の仕組みについては、動物研究の進歩の範囲内での知識の拡大にとどまる。本研究の目的は、細胞分裂、特に紡錘体の形成と配置に関わる植物特異的な遺伝子を、独創的かつ革新的なスクリーニング手法で見つけ出し、その機能を解明することである。
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研究実績の概要 |
このプロジェクトのコアとなるアイデアは、CRISPR遺伝子編集とモデル植物Physcomitrium patens(ヒメツリガネゴケ)の技術的優位性を組み合わせ、これまでにないスピードと効率で遺伝子スクリーニングを実現することである。この研究では、まだ機能的な評価がなされていない遺伝子に焦点を当てている。昨年度は、様々な細胞周期や発生段階のトランスクリプトームデータを用いて、細胞分裂に関与していると思われる遺伝子でライブラリーを作成した。そして、約800の遺伝子を選別し、コケの遺伝子組換え用gRNAライブラリーを作成することに成功した。さらに、CRISPR gRNAライブラリーをコケに形質転換し、最も有望な表現型のスクリーニングを開始した。当研究で用いているスクリーニング方法では、特定の変異体ごとにCRISPRが標的とする遺伝子を同定し、gRNAがゲノムに組み込まれるようになっている。この様に、バッククロッシングや次世代シーケンサーを必要としないスクリーニング方法を開発し、スクリーニング手順の大幅な簡略化とコスト削減を実現した。これまでの研究で、細胞分裂に関連した表現型や細胞骨格に関連した表現型を示す変異体を複数発見し、それぞれのケースでどの遺伝子が変異しているのかを同定する作業を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の進捗状況は以下の通りです。 1) CRISPRスクリーニング手法の確立。 本研究では、コケのCRISPRシステムを用いて、複数の遺伝子を同時にスクリーニングする手法の確立を目指した。そして、CRISPR-Cas9システムを利用し、gRNAライブラリを用いたスクリーニング法を確立し、ターゲットにしている複数の遺伝子に対してCRISPR gRNAライブラリのクローニングとコケへの形質転換を行いました。この手法により、より迅速かつ効率的な遺伝子解析が可能となった。2)スクリーニングによる新しい遺伝子の同定。確立したCRISPRスクリーニング手法を用いて、新しいコケの成長に関わる遺伝子(特に、細胞分裂や細胞骨格の形成に関与していると思われる遺伝子)の同定に成功している。これまでの研究では知られていなかった、コケの成長に重要な役割を果たす遺伝子を同定できたことは、本研究の大きな成果となってる。3) 同定された遺伝子の解析。同定された遺伝子がどのようにコケの成長に影響を与えるのかを解明するため、分子生物学的な手法を用いた実験を行っている。観察された表現型や遺伝子の機能について、ライブセルイメージングやレスキュー実験などによって、詳細な解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画として、CRISPRライブラリーを用いたコケの形質転換を行う予定である。植物の生育に必須の遺伝子の変異体を得ることは難しい場合は、各遺伝子を複数のsgRNAで標的することで、Hypomorphic変異体を得る可能性を高める予定である。また弱い表現型を呈した場合は、確立された誘導型RNAi法を用いて、機能欠失表現型を解析する。 CRISPRで変異させた遺伝子のうち、最も興味深い表現型を同定し、その機能解析を幅広い分子生物学的手法で行う予定である。まず、変異と表現型の関連性については、標的遺伝子のノックアウトやレスキュー実験によって確認する。変異体の機能解析とそれぞれのタンパク質の生細胞での局在を組み合わせることで、タンパク質の機能だけでなく、潜在的な相互作用に関する貴重な情報が得られると期待している。 また、タンパク質を精製してin vitroでDNAや微小管への結合を調べることも検討している。タンパク質相互作用ネットワークの解析の際は、共免疫沈降とタンパク質複合体の質量分析を実施する予定である。タンパク質間の相互作用について詳細に調べることで、さらなる知見を得られると期待している。
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