研究課題
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アルツハイマー病(Alzheimer's disease;AD)は不可逆的な進行性の認知症疾患であり、脳組織でアミロイドβ(Aβ)が蓄積した後、神経細胞内でリン酸化タウが沈着し細胞毒性を発することで起こる。患者は世界的に増加しているが十分な予防・治療法がなく、ADの分子病態を解明するには新たな取り組みが必要である。本研究ではタウを修飾するO型糖鎖がADの発症や進行に及ぼす影響を調べる。そのために、ヒトAD病理と類似するADモデルマウスを作製、解析を行う。O型糖鎖修飾によるタウのリン酸化と神経細胞死の制御機構、また、Aβ沈着による神経炎症との関係を解析することでADの遷移機構を明らかにする。
本研究ではAD病態の発症機構を、タウを修飾するO型糖鎖に着目しその機能の解明を目指す。O型糖鎖はタンパク質のセリンやスレオニンにN-アセチルグルコサミンなどが結合する。その結合部位がリン酸化と同様なため、O型糖鎖はリン酸化の調節に関与すると考えられる。タウでもO型糖鎖修飾によりリン酸化が抑制されること、近年さらに O-GlcNAc付加酵素を欠損すると神経変性が観察されることが報告された。そこで、O型糖鎖はタウの凝集に伴う神経原繊維変化を制御しAD発症の鍵となる可能性がある。しかしながらO型糖鎖修飾とリン酸化のスイッチの制御は不明であり、今後明らかにすべき課題である。そこで本研究では、ADモデルマウスを用いたタウのO型糖鎖修飾の解析を行ってきた。Wtau-TgマウスではFLAGタグが結合したタウを発現しており、発現量が高く生化学的解析に適している。Aβ病変に伴うタウのO型糖鎖修飾の機能を解析するために特異的な抗体が必要となる。そこで対FLAG抗体を用いて両マウスよりタウを精製することで、マススペクトル(MS)解析によりタウのO型糖鎖修飾を同定、O型糖鎖修飾されたタウペプチドをエピトープとしO型糖鎖修飾タウに対する抗体の作製した。作製したO型糖鎖修飾タウに対する抗体を用い、モデルマウス脳よりO型糖鎖修飾タウを精製したが、抗体のコンタミネーションや解析に十分な量なタウタンパク質が精製できず、現在、精製抗体を磁気ビーズに架橋し、より精製度が高く充分量を精製するために条件検討中である。また、若齢時と高齢時の経時的な変化を検討するため、モデルマウスを増やし、経時的な脳サンプルを作製している。ウエスタンブロットによるバンドシフトを確認するとともに、マススペクトル解析によりタリン酸化部位の同定とともにMSによりO型糖鎖構造を解析することで、タウを修飾する新規O型糖鎖の同定を目指す。
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Journal of Biological Chemistry
巻: 299 号: 7 ページ: 104905-104905
10.1016/j.jbc.2023.104905