研究課題/領域番号 |
22K20672
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0703:個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
西嶋 翔太 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(横浜), 研究員 (50805116)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 環境DNA / 多種共存 / メタ群集 / 占有モデル / トレードオフ / 生物多様性 / 生態系評価 / 海産魚類 |
研究開始時の研究の概要 |
海では、多くの種類の魚が生息しているが、様々な特徴をもつ魚種が共存している理由は明らかにされていない。エサや住み場所の争いが弱い種は、別の場所へ移動し定着することで、共存できることが理論的に示唆されている一方で、競争能力と定着能力の関係については十分に検証されていない。本課題では、少量の水を採取することで生息している魚種を網羅的に検出可能な環境DNAを使用し、海産魚類における競争能力と定着能力の関係の検出と多種共存機構の解明に取り組む。多種の時空間分布を同時に推定できる新たな数理統計モデルを開発することで、この課題に取り組み、最終的には海産魚類の生物多様性の健全性を評価することを目指す。
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研究実績の概要 |
これほど多くの生物種がどのように共存しているのか?これは生態学における古くからの問いであると同時に、生物多様性からの恵みを持続的に享受するために取り組むべき重要課題の一つである。多種共存を促進する要因として、競争能力と定着能力のトレードオフがある。そこで本研究では、環境DNAと多種の競争能力と定着能力を推定可能なメタ群集モデルを利用して、海産魚類群集を対象に競争と定着のトレードオフの検出することを目的とした。 当該年度(1年目)は、環境DNAデータに適用なメタ群集モデルの開発に取り組んだ。環境DNAは生息するすべての種を検出できるわけではなく、サンプリングの段階で環境DNAが採取されないことや、分析の過程でDNAが増幅されないことで検出されないこともある。この「不完全の検出(imperfect detection)」の問題を克服するために、占有モデル(occupancy model)がしばしば使用されるが、検出頻度の低い種では極端なパラメータが推定されることが示されている。そこで、従来のメタ個体群占有モデルを多種系に拡張したモデルに、機械学習的手法の一種であるリッジ回帰を組み込んだメタ群集占有モデルを開発し、東京湾でサンプリングと分析を行ったMiFishで取得された環境DNAデータに適用した。その結果、リッジ回帰を組み込まない場合に比べて、現実的なパラメータが推定され、予測精度も高くなることが明らかになった。さらに、この推定結果を用いて、各種の競争能力と定着能力を定量化したところ、両者の能力に明瞭な相関関係が見られ、トレードオフが海産魚類全般にわたって生じていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目に実施予定であった、リッジ回帰を組み込んだ新たなメタ群集占有モデルの推定精度の検証のためのシミュレーションにはまだ着手できなかった一方で、実際のデータに推定した結果については解析を進めることができ、トレードオフの存在が示唆されたことは計画以上の進展であると考えている。計画通り進まなかった点と、計画以上に進んだ点があるため、総合的にみて、「おおむね順調に進んでいる」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、開発したメタ群集占有モデルの推定精度の検証のためのシミュレーションテストを行う。この結果に基づき、必要に応じて、モデルの改良を行い、競争能力と定着能力の間のトレードオフの検出の再解析を行う。さらに、魚種の形質データをFishBaseから収集し、栄養段階や体サイズといった種の形質によって、トレードオフの強さが変化するかどうかを検証する。最後に、メタ群集占有モデルで推定されたパラメータから各種の生息確率の平衡状態を求め、推定された生息確率と比較することで、各種の分布量についての相対評価を行う。これを多種で行うことで、魚類全体を対象とした生態系の健全性評価および生物多様性評価を行う。
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