研究課題/領域番号 |
22K20691
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0704:神経科学、ブレインサイエンスおよびその関連分野
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
引間 卓弥 獨協医科大学, 医学部, 助教 (10582992)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | エピソード記憶 / 皮質脳波 / ドーパミン / 睡眠 / 多感覚情報の統合 / 自己受容体 |
研究開始時の研究の概要 |
エピソード記憶は、ある経験をした際の内容や状況を含む文脈情報で構成されている。特に喜びや感動といった快情動を含むエピソード記憶は、忘れがたい記憶として長く蓄えられるが、快情動の要素を脳機能に修飾するドーパミンが、記憶の形成過程で果たす役割は不明である。また、記憶の文脈情報をコードする海馬や皮質の神経細胞は、新奇体験中や想起時のみならず、体験後の休息や睡眠中にも活動するが、忘れがたい記憶が形成される機構との詳細な関連は不明である。本研究では、体験後の休息や睡眠中における脳の広域活動を観察する計測法を開発し、ドーパミンによる快情動を含む強固なエピソード記憶が固定化される機構の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、休憩中などオフライン時の記憶情報の統合処理過程を脳の広域で観察する計測法を開発し、快情動が付随したエピソードがドーパミンを介して忘れがたい記憶として固定化される機構の解明を目指している。 ドーパミンは、快情動により活性化されて脳機能を修飾する機能を持つ。快情動を伴う新奇エピソード記憶の形成を評価する実験系(条件付け場所嗜好性試験、CPP試験)を確立し、海馬CA1野でのドーパミンが新奇エピソード記憶と快情動を連合するために必須であることを突き止めた。 新奇経験後のオフライン時における海馬‐大脳皮質の活動同期性・連合性を調べるため、慢性下で薄膜型多点皮質脳波電極シートによる脳波測定の計測期間を検証した。昨年度は、電極シート留置から2週間後で皮質脳波を計測可能であることを示した。今年度は、薄膜型多点皮質脳波電極シートを脳表に留置した後、およそ1か月間、一次感覚野から安定した神経活動を計測することに成功した。また、単独の感覚刺激と4種類の感覚刺激(視覚刺激、聴覚刺激、体性感覚刺激、嗅覚刺激)を繰り返し提示した時の皮質脳波を比較するため、ウェーブレット解析を行った。その結果、単独の感覚刺激と4種類の感覚刺激に対する応答に有意な差はみられなかった。さらに、4種類の感覚刺激において、1セット目よりも2セット目の刺激提示により、責任領野以外の領域に脳波が伝播した。このことから、エピソード記憶の形成過程を反映する生理学的現象をとらえた可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
快情動を伴う新奇エピソード記憶の形成を評価する実験系を確立しており、エピソード記憶の形成とD2自己受容体を介したドーパミン修飾との関連をより詳細に検証している。慢性下で薄膜型多点皮質脳波電極シートによる脳波測定の計測期間を検証した結果、薄膜型多点皮質脳波電極シートを脳表に留置した後、およそ1か月間、各一次感覚野から安定した神経活動を計測することに成功した。また、エピソード記憶の形成過程を反映する可能性のある生理学的現象をとらえており、世界に先駆けた発見及び技術を提供できることに繋がっている。さらに、海馬からのカルシウムイメージングと複数の一次感覚野からの脳波計測を同時に行うシステムの構築に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、CPP試験と薬理学的手法・遺伝子工学的手法を用いて、ドーパミン自己受容体による快情動と連合したエピソード記憶の形成への関連を検証する。近年、中脳のみならず青斑核から海馬へのドーパミン修飾が報告された。そこで快情動を伴う記憶に寄与するドーパミンの修飾能の起始核となる領域を詳細に突き止める。 また、海馬CA1野からのカルシウムイメージングと複数の一次感覚野からの脳波を慢性下で同時に計測するシステムを確立する。本研究で確立した海馬‐皮質脳波計測と行動実験を組み合わせて、快情動が不随したエピソードがドーパミンを介して忘れがたい記憶として固定化される機構の解明を目指す。
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