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脳梗塞後のグリア瘢痕制御におけるセクレトームを介したマイクログリアの機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 22K20693
研究種目

研究活動スタート支援

配分区分基金
審査区分 0704:神経科学、ブレインサイエンスおよびその関連分野
研究機関順天堂大学

研究代表者

木島 千景  順天堂大学, 医学部, 准教授 (40710611)

研究期間 (年度) 2022-08-31 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
キーワード脳梗塞 / 軸索再生 / miRNA / グリア瘢痕 / アストロサイト / マイクログリア / セクレトーム
研究開始時の研究の概要

脳梗塞後にはマイクログリアとアストロサイトが活性化し炎症に関わる。慢性期にアストロサイトが集簇し形成するグリア瘢痕は軸索再生を調節し機能回復に重要である。我々は脳梗塞後の軸索再生を制御するグリア瘢痕を構成するアストロサイトとマイクログリアとの相互作用に着目した。先行研究で明らかにしたマイクログリアの因子による神経保護型アストロサイトの誘導、軸索再生及び慢性期の機能回復といった知見をもとに、本研究ではマイクログリアが神経保護的なアストロサイトを誘導する機序について、より具体的な分子病態機構の解明を目指す。後遺症の残存する慢性期にも神経再生を促進する因子を明らかにすることを目的とした研究である。

研究実績の概要

本邦における脳卒中の患者数は約112万人に達し、要介護となる原因疾患の第2位を占める。脳梗塞急性期では再灌流療法が普及したが、依然多くの患者が後遺症に苦慮している。我々は、脳梗塞後に形成されるグリア瘢痕が、軸索再生の調整に関与することに着目した。グリア瘢痕を構成するアストロサイトと、脳梗塞後早期に活性化し炎症に関わるマイクログリアとの相互作用の観点から研究を行ってきた。既に先行研究で明らかにしたマイクログリアによる神経保護型アストロサイトの誘導、軸索再生及び慢性期の機能回復といった知見を基に、本課題では、マイクログリアが神経保護的なアストロサイトを誘導する機序について、セクレトームの側面から具体的な分子病態機構の解明を目指している。アストロサイトの活性化に関わるP2Y1受容体(Gタンパク共役型ATP受容体)の阻害薬、および虚血マイクログリア培養液を投与した虚血アストロサイトから得られた細胞外小胞(EVs)に含まれるmicroRNA-146a-5pがNFκBシグナル伝達を抑制し、炎症性サイトカインTNFαを抑制することで慢性期の機能回復が得られる事を明らかにした。さらにそれらのEVsにおいてCD9、CD63、CD81といった表面抗原の有意な発現増加を認めた。アストロサイトの性質の評価に関し、神経傷害型または保護型について単一の分子のみならず、より網羅的に検討するためmRNA発現の再解析を行った。P2Y1受容体阻害薬および虚血マイクログリア培養液を投与した虚血アストロサイトにおいては、複数の傷害型マーカーの低下と保護型マーカーの上昇を認めた。今後はEVsの組織修復、機能予後改善効果についてより詳細な分子病態機構の解明を進めるべく、脳梗塞モデルラットの組織を用いたRNAの網羅的解析などを行ってゆく計画である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでの研究において、P2Y1阻害薬及び虚血後マイクログリア培地を投与したアストロサイト由来の細胞外小胞中ではmiR-146a-5pの発現が有意に増加し、CD9、CD63、CD81といった表面抗原も有意な発現増加を明らかにした。miR-146a-5p はTRAF6、IRAK1、NFκBを介しTNFαの産生抑制に寄与し、CD9、CD63、CD81などのテトラスパニンと呼ばれる膜タンパクは様々な疾患において抗炎症作用を有すると報告されている。よってそれらが軸索再生と慢性期の機能予後改善のメカニズムであると考えられた。
これらの研究成果はMolecular Neurobiology 2024 Feb;61(2):1002-1021.に掲載された。グリア細胞の機能については未だ不明な点が多くあり、最新の知見も刻々と変化している事から、アストロサイト機能の評価方法、培養手法についてもこの論文投稿におけるリバイス作業、また各学会での発表と議論により幅広い知見を得ることができた。
さらに先行研究で得られた結果をもとに細胞外小胞の組織修復や機能回復にかかわる分子病態機構について、アストロサイトに限定せず、脳梗塞周辺組織を構成する神経、オリゴデンドロサイトを含んだより網羅的な検討を行うため、次期の研究としては、はじめにmicRNAを核酸導入したEVsを作成し、脳梗塞モデルラットに投与する実験系を準備している。

今後の研究の推進方策

EVsによる脳梗塞慢性期の機能回復効果の分子病態機構を明らかにすることが今後の本研究の課題である。これまでの研究において明らかにした、アストロサイト由来のEVsによる組織修復効果の評価において、我々はin vitroにおけるアストロサイトのmRNAの網羅的解析を行い、その分子の多様な変化を明らかにした。さらに、予後改善効果についてEVsに含まれるmicroRNA-146a-5pやEVsの表面抗原が関係する可能性を示した。今後の研究ではアストロサイトに限局せず、脳梗塞後の組織におけるEVsの効果についてより幅広い分子病態機構の解明を目指し以下を計画する。
<miR-146a-5p導入のAEVの作製、評価>新生仔ラット脳からアストロサイトを単離し培養する。培養アストロサイトへmiR-146a-5pを核酸導入し、アストロサイトを再度培養させAEVを回収する。
<miR-146a-5p高発現AEVによる治療効果の評価>8-9週齢のWistarラットにて中大脳動脈閉塞モデルを作製する。脳梗塞亜急性期であるMCAO7日後にラット尾静脈よりAEVs100μgを投与する。Vehicle群、通常ラット、AEVs投与群において生存率、個体の運動障害の変化を解析する。慢性期に相当する28、56日目の脳切片を用い、peri-infarct areaでの組織学的変化を評価する。蛍光標識したEVsと各細胞(神経細胞、軸索、マイクログリア、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、血管内皮/周皮細胞等) のマーカーと共に蛍光二重染色を行う。
<scRNA-seqによる包括的解析>Vehicle群、AEVsを投与した脳梗塞ラットの28日目peri-infarct areaを採取する。採取したPeri-infarct areaの組織を単細胞レベルまで分離しシングルセル発現解析を行い、EVsの効果を包括的に解析する。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Astrocytic Extracellular Vesicles Regulated by Microglial Inflammatory Responses Improve Stroke Recovery2023

    • 著者名/発表者名
      Kijima Chikage、Inaba Toshiki、Hira Kenichiro、Miyamoto Nobukazu、Yamashiro Kazuo、Urabe Takao、Hattori Nobutaka、Ueno Yuji
    • 雑誌名

      Molecular Neurobiology

      巻: 61 号: 2 ページ: 1002-1021

    • DOI

      10.1007/s12035-023-03629-9

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Microgliaの炎症反応によって制御されたAstrocyte由来のEVは脳梗塞慢性期の機能予後を改善する2024

    • 著者名/発表者名
      木島千景
    • 学会等名
      第49回日本脳卒中学会学術集会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] EVs derived from astrocytes regulated by microglial inflammato ry responses improve stroke recovery.2023

    • 著者名/発表者名
      Chikage Kijima
    • 学会等名
      第64回日本神経学会学術大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Microgliaは抗炎症作用を介してA1/A2 Astrocyteを制御し、それらのEVsは脳梗塞の 回復を促進する2022

    • 著者名/発表者名
      木島千景
    • 学会等名
      第65回日本脳循環代謝学会学術集会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] EVs derived from astrocyte regulated by microglial inflammatory respon ses improve stroke recovery.2022

    • 著者名/発表者名
      Chikage Kijima
    • 学会等名
      第64回日本神経学会学術大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-09-01   更新日: 2024-12-25  

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