研究課題/領域番号 |
22K20715
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0801:薬学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松金 良祐 九州大学, 大学病院, 薬剤師 (70957927)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | がん悪液質 / アナモレリン / 骨格筋 / エクソソーム / 体重減少 / リキッドバイオプシー |
研究開始時の研究の概要 |
がん患者に生じる骨格筋減少を中心とした症状をがん悪液質と言い、生活の質を落とし、抗がん薬治療の妨げとなる一因となる。治療薬としてアナモレリンが骨格筋量の増加をもたらす一方で、筋力が改善するほどの回復は認められず、さらなる治療法の開発が望まれている。我々はがん悪液質への対策として「骨格筋萎縮の予防」に焦点を当てており、本研究では骨格筋を萎縮させるメカニズムを追跡し、その治療標的を探索することを目的とする。加えてがん悪液質患者から得られた血液試料から、非侵襲的に骨格筋を評価する方法を用いて、得られた標的の臨床応用性を確認し、複合的要因からがん患者の骨格筋萎縮を予防する薬学的な治療法の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、「がん悪液質の予防」によるがん患者のQOL上昇や予後延長を達成するための新規治療標的探索と、臨床応用の評価を行うことである。骨格筋の萎縮に対する腫瘍由来の炎症性サイトカインの役割は兼ねてより注目され、関連した研究も多い。本研究では、それらに加えがん悪液質の罹患率が高い膵臓癌・非小細胞肺癌で使用される殺細胞性抗がん薬、分子標的薬を中心に、抗がん薬による骨格筋毒性の有無やその分子メカニズムを調査し、「骨格筋萎縮の予防」に焦点を置いた研究を立案している。本年度は、筋芽細胞の細胞株であるC2C12を用いた実験を中心に行い、炎症性サイトカインや各種抗がん薬(シスプラチ ン、カルボプラチン)による筋委縮の観察、およびメカニズムに関連する因子(アポトーシス関連因子、タンパク質分解酵素、マイオカイン等)の分子生物学的解析を実施した。
また、上記で得られた因子を患者由来検体を用いて評価することで、臨床応用性の確認を行う。骨格筋の組織採取は侵襲的であるため、従来がん悪液質患者の骨格筋検体を評価することは困難であった。申請者は血液検体(リキッドバイオプシー)に着目し、骨格筋から血液中に放出される細胞外小胞体(エクソソーム)を選択的に分離し、内包される遺伝子情報(mRNA, microRNA)の解析手法の開発を進めている。現在、少量の健常人血漿サンプルより骨格筋特異的なmiRNA(miR-1,miR-206)を含むエクソソーム分画の濃縮に成功している。がん悪液質患者の臨床研究(前向き観察研究)も進んでおり、骨格筋量を反映する除脂肪体重を計測しつ つ、それと並行した血液サンプルの収集を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
筋芽細胞の細胞株であるC2C12による評価法の確立を行い、炎症性サイトカインや一部抗がん薬の評価を実施した。炎症性サイトカインや抗がん薬に共通した骨格筋萎縮のメカニズムを検討した結果、その萎縮を抑制する可能性のある化合物の導出に成功した。しかしながら、in vivoでの検討まで実施するに至らず、やや進捗が遅れている。
一方で、臨床検体の蓄積および、リキッドバイオプシーを用いた骨格筋萎縮の評価法の確立は予定通り実施できており、こちらはおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、がん悪液質のin vivoモデルを用い、導出した候補化合物の骨格筋萎縮予防効果の検討を行うとともに、より詳細な骨格筋萎縮メカニズムの解明を実施する。
また当初の計画通り、がん悪液質患者の臨床検体を用いて、集積した血液検体より骨格筋特異的エクソソームを抽出する。それらの解析を通じて、上記治療標的の臨床応用性の確認を行う。
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