研究課題/領域番号 |
22K20724
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0801:薬学およびその関連分野
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
西村 壮央 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 助教 (30963649)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 中分子化合物 / 天然化合物 / ケミカルスペース / 化合物ライブラリー |
研究開始時の研究の概要 |
中分子医薬品や抗体薬物複合体などの新しいモダリティが注目されているが、これらに用いられる中分子化合物の探索源としてペプチド型以外の化合物ライブラリーの整備は不十分である。申請者は、天然物の構造をもとに、複雑な構造と大きな分子量を持つビルディングブロックを創出し、これらを用いて天然物を再構築することで大環状構造を持つ中分子化合物ライブラリーを創出する。これにより、天然物の特徴を持ちながら、独自性および構造多様性の高い化合物群を創出するための新たな方法論を確立する。構築した化合物ライブラリーは、ケモインフォマティクス解析や生物活性を通して化合物ライブラリーの有用性を示す。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、入手容易な天然化合物を分解反応に付すことで、複雑な構造と多様な官能基を有するビルディングブロックを構築する。さらに、得られたビルディングブロックを組み合わせることにより、天然化合物の再構築を行い、 大環状構造を有する中分子化合物ライブラリーを構築する。現在利用されている中分子化合物ライブラリーの多くはペプチド型化合物からなっており、その構造多様性をさらに拡大することが新たな中分子化合物の探索研究に重要であると考えている。本研究課題では、既存の中分子化合物ライブラリーとは大きく異なる構造的特徴を有する化合物群を構築することを目的する。 現時点では、微生物由来マクロライドであるエリスロマイシンおよび、植物由来テルペノイドであるアビエチン酸の構造を基盤としてビルディングブロック化の検討を行っている。エリスロマイシンに対しては文献既知の方法に従い、N-オキシド化、アザコープ転位による窒素原子の除去、加水分解による糖の除去について検討を行った。予想に反して、加水分解反応において系中が複雑化し、目的の化合物は低収率でのみ得られた。 複数の反応条件において検討を行ったが、十分な収率で目的物を得ることは難しいと判断した。今後、異なる反応条件においてさらなる検討を行う予定である。アビエチン酸については、二重結合の酸化と続く酸化開裂により開環体を得ることができた。今後、こちらの化合物を基盤に、ビルディングブロックとして適切な官能基を導入していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複雑な構造と多数の官能基を有する天然化合物に対して化学反応を行った場合、予期しない反応や反応系中の複雑化などが起こるため、通常の合成基質に対して反応を行うよりも反応のコントロールが難しい場合がある。実際に本研究課題で扱ったエリスロマイシンは多数のヒドロキシ基を有し、塩基性条件下で容易にエステル交換反応が起こり、酸性条件下ではアセタール化により、目的とした構造を得るための反応条件の設定に詳細な検討を必要としている。一方で、各反応条件における化合物の挙動を詳細な観察により多くの知見を得ているため、今後検討を行うことで有用なビルディングブロックの創出が可能であると考えている。 また、アビエチン酸を利用した検討については、想定した通りの反応が進行しており、今後適切な官能基を導入することにより、ビルディングブロック化を目指す。 以上のような状況から、本研究課題の進捗状況は、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、現時点で検討が進行しているアビエチン酸を利用したビルディングブロックの作成に注力していく。酸化開裂により生じたケトン、もしくはアルデヒドを利用した官能基の導入および保護基の導入によりビルディングブロックとして利用しやすい構造へと展開していく。 また、目的とした化合物が得られていないエリスロマイシンについても、文献未知の反応を検討していく。具体的には、より強酸である硫酸を用いた反応条件の利用や、還元剤による開環反応、過ヨウ素酸カリウムなどを用いた酸化開裂反応、遷移金属触媒を用いた反応など、様々な反応条件を検討することにより、エリスロマイシンの構造的特徴を持つ部分構造を得ることができると期待している。
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