研究課題/領域番号 |
22K20731
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0801:薬学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小坂元 陽奈 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (50962908)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 栄養応答 / アミノ酸 / ショウジョウバエ / チロシン / 核内受容体 / スプライシング |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではチロシンセンサーとしての可能性を見出したオーファン核内受容体のATF4活性化への寄与を検証し、機能解析を行うとともに、センシングに関与する因子をスクリーニングによって網羅的に探索する。ショウジョウバエを用いた遺伝学的操作に加え、マウス前脂肪細胞(3T3-L1細胞)を用いたスクリーニングや生化学的手法を融合させることで、チロシンがもたらす栄養応答メカニズムの全貌を解明する。
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研究実績の概要 |
本年度は、非必須アミノ酸チロシンの感知実体を明らかにするために、ショウジョウバエを用いた核内受容体に着目した解析と、哺乳類細胞を用いた網羅的なsiRNAスクリーニングを実施した。 まず着目した核内受容体についてリガンド結合部位への点変異を導入し、チロシン有無で変化する表現型についての寄与を検討した。チロシン欠乏に応答して活性化することを見出しているATF4レポーターの蛍光を観察したところ、リガンド結合部位への点変異によりその応答が鈍ることを見出した。同様の結果は当該核内受容体の機能欠損個体でも観察されたことから、チロシンセンシングへの関与が示唆された。しかし、幼虫の摂食量変化などこれまで着目してきた個体全体としての表現型に大きな変化は見られなかった。そこで成虫に視点を移し、チロシン制限で見られる寿命延長や食嗜好性の変化に対する当該核内受容体の寄与を検討中である。 また、この核内受容体の精製タンパク質とチロシンを用いた生化学的なリガンド結合アッセイでは、チロシンとの結合を明確に証明することができなかった。精製タンパク質のDNA結合ドメインの疎水性が高く溶解していなかったことが原因の一つと考えられるため、リガンド結合部位のみを用いた結合アッセイに取り組んでいる。 哺乳類細胞を用いたsiRNAスクリーニングについても終了させ、チロシンセンシングをはじめアミノ酸飢餓やERストレスに共通して関与する可能性のある経路としてスプライシングイベントが浮上した。スプライシングによる転写因子活性制御機構はほとんどわかっていないため、次年度はRNAseqを行うなどして細胞にどのような転写変化が起こっているのか明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
核内受容体の寄与について、ATF4活性化レポーターではある程度見られたものの、これまで見てきたショウジョウバエ幼虫の表現型(翻訳・摂食量・mTORC1活性の変化)においては予想していたほどの大きな寄与は見られなかった。しかし成虫ではチロシン制限時に見られる中性脂肪の増加や飢餓耐性の向上、寿命延長、食嗜好性変化といった表現型に関与する可能性が示唆されている。それらの表現型に対する寄与が証明されれば、当該核内受容体の新規機能の発見並びに新規のリガンド応答性を示すこととなり大きな発見となることが期待される。 核内受容体とチロシンの直接の結合を証明することが本研究において重要な点であるが、全長の核内受容体を用いた場合にはアッセイがうまく動かず、リガンド添加による熱変性度合いの変化を元にした結合の証明は叶わなかった。この原因として核内受容体に存在するDNA結合ドメインがタンパク質の凝集を引き起こしてしまうことに起因することが予想されたため、現在リガンド結合ドメインのみを用いたアッセイを構築中である。また、リガンド結合に重要だと予想されるアミノ酸残基に点変異を導入したタンパク質も準備している。L-チロシンやD-チロシンが結合する一方、DL-m-チロシンは結合しないという予想が立っているため、これらを用いて結合アッセイの信頼性を高めたい。 siRNAスクリーニングについては当初の計画通り進めることができた。チロシン感知に特異的な栄養応答経路を探索することが目的であったが、スクリーニングで数多くヒットした候補であるスプライシングファクター群はロイシン欠乏やERストレス化でもATF4活性化に寄与するようであった。当初の目的とは少しずれるが、より一般的なストレス応答に対してスプラシングが関与するということも興味深いため、そのメカニズムについても明らかにしていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の主な方策として、核内受容体の解析については以下の3点を予定している。核内受容体のチロシンとの結合を生化学的に証明すること(当初予定位していたサーマルシフトアッセイに加え、共同研究でマイクロスケール熱泳動法も使用)、核内受容体の成虫における寄与の検討とそのメカニズム解析を行うこと(寿命延長、タンパク質嗜好性の増加、中性脂肪蓄積、飢餓耐性向上などのチロシン制限で見られる表現型に着目)、核内受容体とATF4の相互作用について証明すること(Bimolecular fluorescence complementation assayに基づいた両者の結合を培養細胞とショウジョウバエ体内でみる、またIP-MSを用いて両者の結合がチロシン有無で変化するかを解析する)。 siRNAスクリーニングから得られた、ATF4活性化におけるスプライシングファクターの寄与についての解析は以下の3点を予定している。スプライシングファクターのノックダウンの有無でチロシン制限をかけた時のRNAseqによるスプライシングイベント変化の解析、スプライシングファクターとATF4の相互作用解析(IP-westernや共染色)、アミノ酸制限やERストレスにおける古典的なATF4活性化経路に対する寄与の検討(western blottingを中心に行う)。
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