研究実績の概要 |
下肢虚血は血管の狭窄・閉塞により間欠性跛行や皮膚潰瘍、壊疽を起こす疾患であり、現行治療では効果が限定的で、治療費用が高額という問題がある。分極ハイドロキシアパタイト(Hydroxyapatite electret, HAE)は血管新生効果を有し、安価に大量生産できるメリットを持つが、今回下肢虚血モデルマウスにおいてHAE局所注射が、血管新生効果および救肢率改善効果があるかを検討した。C57BL6 wild typeマウスに総大腿動脈、浅大腿動脈、深大腿動脈の3本を結紮、切断することで下肢虚血モデルマウスを作成した。直後に、大腿~下腿に4カ所、①HAE 1μg/μl(HAE-1群)、②HAE 3μg/μL(HAE-3群)、③HAE 10μg/μL(HAE-10群)、④PBS(Control群)を各50μlずつ局所注射した。Control群では下腿脱落が3/6 (50%)見られたのに対し、HAE-1群で1/6 (17%)、HAE-3、HAE-10群では見られなかった。また、壊死なしはControl群で1/6 (17%)、HAE-1群で4/6 (67%)、HAE-3群で2/6 (33%)、HAE-10群で5/6 (83%)とHAE投与にて濃度に関わらず壊死が少ない傾向が見られた。術前後~14病日までレーザー血流計による血流評価を行った。大腿部の血流は、第7病日から群間の差が広がり、14病日ではHAE-10, HAE-1, HAE-3, Control群の順に血流が良好であり、14病日の血流はControl群とHAE-10、Control群とHAE-1の間には有意な差が見られた(それぞれP<0.01, P=0.03)。血管新生関連の遺伝子であるVegf, Hif1a, Cxcl12は各群で有意差は認めず、HAE投与による血流改善は他の分子機構を介した機序である可能性が示唆された。
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