研究課題/領域番号 |
22K20764
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0803:病理病態学、感染・免疫学およびその関連分野
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
笠原 良太 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任研究員 (40964127)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | パーキンソン病 / α-Synuclein / ショウジョウバエ / 脂質 / ATGL / 脂肪滴 / 阻害剤 / 神経変性 / タンパク質凝集 / 脂肪酸 / トリアシルグリセロール |
研究開始時の研究の概要 |
パーキンソン病(PD)の発症・進行に寄与するタンパク質α-Synucleinの凝集形成はPLA2G6やVPS13Cといった脂質関連遺伝子の機能喪失変異が原因・リスクとなって亢進する。このエビデンスから、α-Synuclein凝集形成の原因として脂質恒常性の破綻が重要であると考えられる。本研究ではPDモデルとしてショウジョウバエ、およびヒト培養細胞を用いて脂質に着目したオミックス解析と遺伝学的スクリーニングによる凝集リスクとなる脂質代謝酵素および脂質分子種の同定を目的とする。また、同定した酵素を標的とした創薬スクリーニング系および脂質分子種の経口投与によるPD予防・疾患修飾療法の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
前年度、ハエモデルを用いた解析からトリアシルグリセロールおよびその分解酵素であるbmm (ATGL)をα-Synuclein凝集化に関与する脂質分子、脂質代謝酵素の有力候補として同定した。ハエモデルではbmmを過剰発現した個体で凝集化の亢進が見られた。 このATGLとα-Synuclein凝集化との関係性について、ヒト培養細胞を用いた試験を実施した。GFPタグ付きのα-Synucleinを一過性過剰発現出来る293細胞を用いてATGLの過剰発現および発現抑制によるα-Synuclein凝集化への影響を解析したところ、それぞれで凝集化の亢進および抑制が見られた。以上の結果から、ヒト細胞においてもATGLの活性化がα-Synuclein凝集化に関与することが考えられた。 ATGLは細胞で脂肪滴表面に局在する分子であるため、変異体における脂肪滴の動態について調査を行った。家族性パーキンソン病(PD)の原因遺伝子PLA2G6およびVPS13-KOハエの脳を用いて脂肪滴の染色を行ったところ、両者とも野生型に比してより多くの脂肪滴形成が認められた。また、特にPLA2G6-KO個体では通常脂肪滴が形成されない神経細胞の領域においても局在が認めれられた。さらに、ATGLの過剰発現が脂質組成に与える影響を調査するため質量分析を実施したところ、過剰発現個体でトリアシルグリセロールの増加がみられた。 ATGLに対する阻害剤がPDの疾患修飾薬となる可能性を探るため、培養細胞およびマウスモデルについて、薬剤投与試験を実施した。PLA2G6およびVPS13CをKOしたHeLa細胞に市販のATGL阻害剤を投与したところ、α-Synuclein凝集化の抑制傾向が見られた。また、繊維化α-Synucleinをマウス脳に注入してPDモデルマウスを作製し、ATGL阻害剤の経鼻投与を4カ月に渡って実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の結果を踏まえ、ヒト培養細胞を用いてATGLとα-Synuclein凝集化との相互作用を明らかにすることが出来た。また、ATGLの局在オルガネラである脂肪滴がパーキンソン病モデルショウジョウバエで異常形成されていることを突き止めた。加えて、ATGLに対する阻害薬がα-Synuclein抗凝集化効果を持つことを確認できたため、パーキンソン病の疾患修飾薬ターゲットとしてATGLが有望であることを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度として、これまで得られた結果の検証と論文化を目指す。ATGLとα-Synuclein凝集化との相互作用についてはハエモデルおよび変異HeLa細胞を用いて、特に脂肪滴の異形成と凝集化との関係性を調査する。また、ATGL阻害剤のパーキンソン病疾患修飾薬としての可能性探索は変異HeLa細胞を用いて引き続き解析を行うと共に、マウスモデルにおいても阻害剤の効果を確認する。さらに、パーキンソン病患者由来iPS細胞でも阻害剤の効果を検証し、より効果的な阻害剤のスクリーニング系確立にも着手する。
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