研究課題/領域番号 |
22K20801
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0901:腫瘍学およびその関連分野
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
北見 和久 北里大学, 医学部, 助教 (50965986)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 卵巣癌 / 腹膜播種 / 上皮間葉転換 / 中皮間葉転換 / ビタミンD / 癌関連中皮細胞 / 脂肪細胞 / 中皮細胞 / 間葉転換 / 癌微小環境 |
研究開始時の研究の概要 |
腹膜播種を伴う進行卵巣癌に対する有効な治療法は未だ確立されておらず、腫瘍の病勢を制御することで難治性を打破する新たな治療戦略が期待される。進行卵巣癌腹膜播種において、卵巣癌細胞と腹膜中皮細胞との異種細胞間クロストークの重要性が明らかとなってきた。本研究課題では、脂肪組織近傍に存在する腹膜中皮細胞の特性と卵巣癌細胞の接着・親和性との分子生物学的関連を探索するため、ヒト大網由来の腹膜中皮細胞および脂肪細胞を使用した共培養モデルや、腹腔内における腹膜中皮細胞特異的に標識した遺伝子改変マウスを用いることで、卵巣癌-腹膜中皮細胞間の接着分子と細胞外基質との相互作用に着目した分子機構を詳細に解明する。
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研究実績の概要 |
研究代表者はこれまでに、本来防御的な腹膜中皮細胞が、癌細胞由来のTGF-β1によって上皮間葉転換(EMT: epithelial-mesenchymal transition)を遂げ、癌促進的な癌関連中皮細胞(CAM: Cancer associated mesothelial cell)に変化することを見出した。またCAMが腹膜播種の癌微小環境に多数存在し、VEGF分泌を介した悪性腹水の生成や、fibronectin分泌を介した卵巣癌プラチナ耐性化、thrombospondin-1分泌を介した癌細胞接着の亢進に寄与することを明らかにした。 ビタミンDは、ビタミンD受容体(VDR)を介したカルシウム調節や骨代謝などの生命維持に欠かせない広範な生物学的作用を有しているが、遺伝子の代謝調節因子としても機能する。ビタミンDの癌抑制作用が注目されており、実際に、癌細胞の接着と浸潤を阻害し、腹膜環境内の腫瘍細胞に対する免疫反応を調節し、抗血管新生作用を発揮して、転移性腫瘍の増殖に不可欠な脈管形成を阻害する可能性があることが報告されている。我々は、ビタミンDが腹膜中皮細胞の正常化を介して卵巣癌腹膜播種の進行を抑制することを報告している。 ビタミンDは腹膜播種治療に有望な薬剤であるが、広範な生物学的作用を有するが故に、副作用の発現が問題となる。ビタミンDには多数の代謝産物があるが、その生物学的作用そのほとんどは未解明のままである。そこで我々は、ビタミンD関連化合物が中皮細胞のEMTを阻害し、卵巣癌腹膜播種形成を抑制するか検討したところ、副作用を軽減しながら、ビタミンDと同様に癌抑制作用を示すことを明らかにした。ビタミンDの癌微小環境に癌免疫の調節作用も報告されており、今後、抗癌剤や免疫チェックポイント阻害薬等の薬剤との組み合わせによる治療効果を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
卵巣癌患者の大網検体から、表層の腹膜中皮細胞をレーザーマイクロダイセクションにて抽出し、プロテオーム解析に提出する予定であったが、腹膜播種を伴う大網表面の癌細胞と腹膜中皮細胞を区別することが困難で、解析に提出できていない。
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今後の研究の推進方策 |
腹膜中皮細胞の恒常性を維持する蛋白を同定し、その機能についてin vitro, in vivoにて解析中である。その蛋白の機能と腹膜中皮細胞の恒常性維持メカニズムの解明を通して、癌を寄せ付けない中皮細胞を含む、癌抑制的腹腔内環境を維持する治療の開発を目指す。
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