研究課題
研究活動スタート支援
急性骨髄性白血病(AML)は成人の白血病の中で最も多く、難治性AMLは高齢者に多発する。抗アポトーシス因子であるBCL2の阻害剤ベネトクラクスとDNMT阻害剤の併用療法が良好な結果を示し、強力化学治療が困難な高齢AML患者の標準治療となりうることが期待される。しかし、併用療法によっても治療抵抗性が生じる。そのため、適した患者に適した治療を選別することが課題である。本研究では、未治療と再発・難治性症例において、治療効果が異なる要因として、奏効群と非奏効群での遺伝子発現パターン、DNAメチル化の変化を解析して、予測マーカーを探索し、併用療法が相乗的に抗腫瘍効果を示す機序を解明する。
高齢者に多発する急性骨髄性白血病(AML)において、抗アポトーシス因子BCL2の阻害剤VenetoclaxとDNAメチル化酵素阻害剤の併用療法は、強力な化学治療が困難な高齢者や併存疾患を持つAML患者に対する第一選択となっている。この治療では、抗腫瘍効果と副作用の低減が両立し、有効性が示されているが、一方で、限定的な効果や治療耐性が認められる例も多く報告されている。本研究では、AMLにおけるVenetoclaxとDNAメチル化酵素阻害剤 (Decitabine, DEC) 併用療法(VEN-DEC) によって誘導される獲得耐性の分子機構を明らかにし、VEN-DEC療法の効果予測マーカーを突き止めることを目的とする。本年度は、昨年度までの検討で得られた効果予測マーカー候補遺伝子が、VEN-DEC治療の耐性に関与するか否かについて、AML細胞株を用いたoverexpression実験で検証を行った。脂肪酸代謝に関連する候補遺伝子のoverexpression細胞を樹立し、VEN-DEC治療によるapoptosis誘導効果の変化と関連遺伝子、蛋白発現の変化を検討した。その結果、overexpression細胞においてVEN-DEC暴露後のアポトーシス誘導が抑制された。さらに骨髄微小環境を模倣する目的で、AML細胞と骨髄間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell, MSC)との共培養実験を行い、AML細胞における候補遺伝子の発現がMSCとの共培養条件下でどのように変化するかを調べた結果、共培養条件下においてVEN-DEC暴露後のAML細胞株で候補遺伝子発現の亢進を認めた。以上の結果より、AML細胞がVEN-DEC治療後に獲得する耐性機序に脂肪酸代謝と骨髄間質細胞との相互作用が関与していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
耐性獲得マーカーとしてPPARG遺伝子を抽出し、AML細胞株を用いたPPARG overexpression(OE)実験を進め、PPARG OE細胞がVEN-DEC耐性を獲得することを明らかにした。さらに、AML細胞とMSCの共培養実験によってMSCの存在下でPPARG遺伝子の発現がさらに亢進することを見いだし、骨髄微小環境課での耐性獲得機序の一旦を示すことができた。
AML患者検体を用いて、scRNA-seq解析を行い、AML細胞クラスターを描出する。その中で白血病幹細胞(Leukemic stem cell; LSC)のクラスターを探索する。scRNA-seqでは複数のAMLクラスターが得られることが想定されるため、それぞれのAMLクラスターについて、VEN-DEC治療前後の転写プロファイルの比較を行う。その際には、治療奏効群と非奏効群について比較検討を行う。また、VEN-DEC治療前の各AMLクラスター細胞について非奏効AML細胞で特徴的に発現亢進する遺伝子群を突き止める。Validation studyとして以上のscRNA-seqで得られた治療耐性マーカー候補遺伝子について、先行研究で実施したRNA-seqデータを用いて、治療奏効群と非奏効群のAML細胞の発現レベルを検証する。本検証には、機械学習のロジスティクス回帰を用い、予後予測モデルの構築を目指す。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
PLOS ONE
巻: 18 号: 1 ページ: e0279779-e0279779
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10.1371/journal.pone.0274181