研究課題
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脳刺激マッピング研究では前部側頭葉の底面が側頭葉底面言語野(BTLA)として知られている。治療的必要性から同領域を切除された患者で一過性の言語障害が生じるが、長期的には重篤な障害を残さない。本研究は1)電気的白質線維追跡法にグラフ理論を応用し、前部側頭葉が機能的に結合する言語関連ネットワークの構造学的特徴を明らかにし、BTLAと共振する領域の情報の付加から、BTLAの言語機能発現のネットワーク基盤を明らかにする。2)治療的必要性から前部側頭葉を切除する患者の縦断的な神経心理検査から、切除領域のネットワーク構造特徴と言語可塑性を比較し、言語可塑性にかかわる神経ネットワーク基盤の同定をめざす。
言語機能の脳局在に関して、古典的なWernicke-GeschwindモデルではBroca野とWernicke野、両者を結合する弓状束が重要とされるが、てんかん外科の頭蓋内電極を用いた脳刺激マッピング研究では前部側頭葉の底面が側頭葉底面言語野(BTLA)として知られている。治療的必要性から同領域を切除された患者で術後一過性の言語障害が生じるが、長期的には重篤な障害を残さないことが経験される。その詳細な可塑性の有無や関連する神経ネットワーク基盤は未だ明らかでない。本研究では、電気的白質線維追跡法(皮質・皮質間誘発電位cortico-cortical evoked potential;CCEPや刺激遠隔効果intrastimulus discharge;ISD)にグラフ理論を応用し、前部側頭葉が機能的に結合する言語関連ネットワークの構造学的特徴を明らかにすることを目標としている。2022年度の成果としては、術前評価として刺激マッピングに関わる臨床的立場から、日本語話者の脳病態下におけるBTLA内の機能解剖学的差異について論文を投稿した(Matoba et al., Cerebral Cortex. in revision)。今後も研究を進め、刺激マッピング時にBTLAと共振する領域情報を電気的白質線維追跡法に付加することで言語機能発現のネットワーク基盤を明らかにし、さらに治療的必要性から前部側頭葉を切除する患者において術前後のネットワーク構造特徴と言語可塑性を比較することで、言語可塑性にかかわる神経ネットワーク基盤を同定することを目指す。
2: おおむね順調に進展している
本研究の出発点となる側頭葉底面言語野の機能解明に向けた論文を投稿しており、今後は手術症例の蓄積と更なる解析により適切に進行できると考える。
網羅的CCEP計測とグラフ理論によるネットワーク構造抽出に、ネットワーク共振の時間空間的プロファイリングを付加することで、BTLA刺激時の言語障害出現のネットワーク基盤を同定する。脳外科患者で神経心理検査の縦断的な定量評価を行い、言語可塑性と切除部位のネットワーク構造の特徴量を比較することで、機能代償機転を明らかにする。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
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