研究課題/領域番号 |
22K20860
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0902:内科学一般およびその関連分野
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
鹿子嶋 洋明 大分大学, 医学部, 医員 (50966687)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 炎症性腸疾患 / 自己免疫性肝炎 / ケモカイン / MIP-1γ / 腸炎 / 肝炎 |
研究開始時の研究の概要 |
炎症性腸疾患は原因不明で再燃寛解を繰り返しながら慢性的に経過する難治性疾患である。近年Th17細胞という新規T細胞サブセットが発見され、炎症性腸疾患の病態形成に新たな分子機構が提唱されている。MIP-1γは腸管や肝臓で発現するケモカインで、この受容体CCR1はT細胞や樹状細胞に発現しているため、MIP-1γの濃度勾配に従いこれらの免疫細胞が腸管組織や肝臓の炎症部位へ集積してくることが予想されるが、MIP-1γ欠損マウスを用いた研究は未報告で、その生理的機能は不明である。そこで、本研究では独自のMIP-1γ欠損マウスを用いて、IBDや肝炎の病態形成におけるMIP-1γの生理的役割を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、炎症性腸疾患と自己免疫性肝炎という消化器分野における難病の病態形成において、ケモカインMIP1-γがどのような役割を担っているかを解析することである。 まず、MIP-1γ遺伝子欠損マウスの定常状態の解析を行い、MIP-1γ遺伝子欠損マウスと野生型(WT)マウスの胸腺におけるT細胞の分化および脾臓におけるT細胞とB細胞の割合に変化がないことをフローサイトメトリーで確認した。 炎症性腸疾患モデルは、DSS(デキストラン硫酸ナトリウム)の自由飲水による実験的大腸炎モデルを選択し、自己免疫性肝炎モデルは、ConA(コンカナバリンA)の経静脈投与による急性肝炎モデルを選択した。 初年度は主にDSS腸炎に関しての解析を行なった。体重変化では、WTマウスとMIP1-γ遺伝子欠損マウスでは同程度の体重減少を呈し、体重変化と下痢と血便の合計スコアで評価するDAIも同様の結果であった。サイトカイン発現解析では、MIP-1γ遺伝子欠損マウスにおいてTNFαが低い傾向にあったが有意差は認めなかった。よって、WTマウスとMIP1-γ遺伝子欠損マウスの2群間において、現時点でDSS腸炎における明らかな表現型の差は見られない。そのため、今後は、DSS腸炎の実験プロトコルの変更や、DSS腸炎以外の腸炎の導入法も検討している。 ConA肝炎に関しては、現時点で未だ十分な解析が行えていないが、ConAを経静脈投与後24時間の時点での肝逸脱酵素(AST,ALT)の評価では、WTマウスとMIP1-γ遺伝子欠損マウスの2群間において有意差は認められていない。今後も、組織学的評価や生存率など含め評価を行なっていく予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々が独自に作成したMIP-1γ遺伝子欠損マウスは、定常状態において胸腺におけるT細胞の分化および脾臓におけるT細胞とB細胞の割合に変化がないことを確認出来た。また、MIP1-γ遺伝子欠損マウスと野生型マウスにおいて、DSS腸炎での有意差は認めなかったが、初年度に予定していた実験は行なうことが出来た。また、肝炎におけるMIP1-γの機能解析に着手し、今後更なる解析を行う予定としている。
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今後の研究の推進方策 |
まずMIP-1γ遺伝子欠損マウスの定常状態の解析では、現時点では胸腺・脾臓でのリンパ球の局在を示したが、今後は骨髄系細胞にも注目して解析する予定である。また、MIP-1γを発現するパイエル板や、肝炎モデルの解析を行うため肝臓での免疫細胞の局在に関してもフローサイトメトリー法を用いて明らかにしていきたい。 炎症性腸疾患の病態解明に関しては、DSS腸炎の実験プロトコルの変更や、TNBSなどを用いたDSS腸炎以外の腸炎の導入法も検討している。また、自己免疫性肝炎の病態解明に関しては、今後もConA肝炎モデルを用いて、血液生化学的検査に加えて、組織学的評価やqPCRによるサイトカイン発現量の解析、フローサイトメトリー法を用いて免疫細胞の割合や局在の評価も行なっていく予定である。
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