研究課題/領域番号 |
22K20881
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0902:内科学一般およびその関連分野
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
森 雄太郎 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, テニュアトラック助教 (00781618)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | オルガノイド / 慢性腎臓病 / 細胞老化 / 初代培養 / 疾患モデル / 尿細管 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、初代培養由来尿細管オルガノイドの作製を、数十例の腎摘出術を受ける患者から実施してライブラリ化し、個々の患者の特性を再現する、ヒトをベースにした病態モデルおよび薬効・毒性検証のプラットフォームとして確立することを目的とする。これにより、マウスと実際のヒトの間を埋め、かつヒトの個体差をも反映する病態モデルとして活用し、慢性腎臓病を中心とした慢性腎疾患の病態解明と創薬に応用していくことを目指す。
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研究実績の概要 |
研究計画に則り、本学腎泌尿器外科学分野との協力のもと、現時点で17例の腎癌などの疾患のために腎摘出術を受ける患者より同意を取得し、腎臓の断片を取得し、初代培養上皮細胞の樹立を行い、全例で成功した。これらについて、三次元培養による尿細管オルガノイドの樹立と、患者プロファイルとの対応の検証を順次行った。その結果、まず、腎機能が低下した慢性腎臓病を有する患者では、尿細管オルガノイドの三次元化能力が消失ないし低下していることが判明した。二次元培養の段階で慢性腎臓病罹患患者の初代培養上皮細胞は、紡錘状の線維芽細胞に似たような形態を示し、細胞体や核のサイズも大きかった。三次元化したオルガノイドとした上で、mRNAを抽出し、炎症関連の分子を評価したところ、自然免疫系のキー分子であるNF-κBが、CKD患者の腎臓では健常腎機能の患者の腎臓に比較して、200倍ほど多く発現していた。現在漸次、炎症・線維化関連のキー分子を中心に、患者プロファイルとオルガノイドが示す所見の相関関係を検討しているところである。特にCKD患者の腎臓から得られた細胞による尿細管オルガノイドを応用することで、世界初のヒトに由来するCKD病態モデルを作製することが視野に入ってきている。 不死化したオルガノイドのライブラリ化は、まだ実施できていない。現段階で、hTERT-RPTECというhTERT導入済みの半不死化されたヒト腎上皮初代培養細胞を購入し、その三次元化を試みた。その結果、想定よりも時間がかかったものの、オルガノイドの形成が確認できた。今後、ライブラリ化が進行している腎上皮初代培養細胞をhTERT導入により不死化し、不死化オルガノイドライブラリの作製を実施していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
患者をリクルートするという実験の性質上、腎摘出術を受ける患者の数が律速となる。細胞作製のエフォートを考慮すると全例のリクルートは難しく、当初研究費申請段階の見通しと比較して、手術の日程と当方のスケジュールが合わないことが多く、ライブラリ形成に時間を要している。これを起点に、研究計画が若干遅れている状況である。解析の足並みを十数例程度である程度揃える必要もあり、その後の解析も遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
患者プロファイルとオルガノイドの所見の対応関係を、計画段階よりもより網羅的に検証するため、一部のケースではあるが、オルガノイドの検体を選び、シングルセルRNA-seqを実施する方向に方針を転換している。今年度中に、一部のケースのオルガノイド(特に正常腎機能、初期CKD、末期CKDの対比で例を選ぶ)でシングルセルRNA-seqを実施し、集中的な解析のターゲットとなる分子の見極めと、CKDに特徴的な細胞集団の同定を行なっていく。 糖尿病性腎臓病治療薬TW-37の投与は二次元培養のレベルですでに開始している。今後ライブラリ化されたオルガノイドで各例並列でTW-37の投与を行い、上記で当たりをつけた分子を中心に薬効と毒性の確認を実施していく。
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