研究課題
研究活動スタート支援
Retinal vasculopathy with cerebral leukoencephalopathy(RVCL)は、40代前後で発症し、約10年の経過で死亡する、遺伝性脳小血管病である。原因遺伝子は、three-prime repair exonuclease 1(TREX1)遺伝子である。申請者は、これまでに、ヒト細胞モデルにおいてRVCL変異TREX1が、核内局在とエキソヌクレアーゼ活性に依存したDNA切断損傷と細胞毒性をもたらすことを見出した。本研究では、ショウジョウバエモデルのRNAiスクリーニングで見出した、表現型抑制候補遺伝子がヒト遺伝子種で治療標的となり得るか検証する。
Retinal vasculopathy with cerebral leukoencephalopathy (RVCL)ショウジョウバエモデルのラフアイ表現型を改善させた24遺伝子のgene ontology経路解析では、DNA損傷修復経路(DDR)に遺伝子クラスターを認めた。これは、RVCL疾患変異TREX1(RVCL-TREX1)の細胞毒性が、DDRの異常により引き起こされることを示唆した。DDR障害がある場合、DNA修復の阻害への感受性が上昇し得る。そこで、PARP阻害薬であるオラパリブを野生型マウスまたはRVCLマウスモデルへ投与して、マウス胎児由来線維芽細胞(MEFs)の生存性を評価した。オラパリブ投与により、RVCL MEFsは15-20%の細胞死が、野生型MEFsでは3-6%の細胞死がもたらされた。すなわち、RVCL-TREX1がPARP阻害薬への感受性を高めることが分かった。また、RVCL MEFsでは、γH2AX染色が増加しており、DNA損傷が引き起こされていた。DNA損傷が惹起される背景として、RVCL-TREX1が特定のDNA修復経路を阻害する可能性を考えた。そこで、homologous DNA repair(HDR)とnon-homologous end joining(NHEJ)によるDNA修復効率を測定した。結果、RVCL-TREX1発現細胞では、single-stranded template repair(SSTR)効率が低下しており、HDRの障害が示唆された。一方、NHEJ効率は上昇しており、これは、HDR欠損細胞と類似していた。以上から、RVCL-TREX1が細胞毒性をもたらす機序として、HDR効率が低下することで、DNA損傷が蓄積する可能性が示された。
すべて 2024 2023 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
Neurology International
巻: 16 号: 1 ページ: 226-238
10.3390/neurolint16010015
Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry
巻: 94 号: 1 ページ: 74-81
10.1136/jnnp-2022-329917