研究課題
研究活動スタート支援
B型肝炎をはじめとする慢性肝疾患において肝発癌リスクを正確に評価する事は、適切なサーベランスを行い、早期発見/治療による予後改善および肝発癌病態の解明につながると考えられる。本研究ではこれまでに確立してきたヒトinduced pluripotent stem cells (iPS細胞)の肝前駆細胞誘導・肝細胞成熟化誘導および肝炎ウイルス感染機構研究の学術・技術基盤および独自に構築した2000例以上からなる慢性肝疾患患者のコホートデータベースに基づいて、HBV肝発癌の病態解明、及び慢性肝疾患の進展を阻止しうる個人差を踏まえた精緻医療開発へ向けた基礎臨床の融合研究を行う。
臨床情報データベースを用いた探索解析として、B型慢性肝疾患における肝細胞癌の解析を行った。当院にてエラストグラフィ(Fibroscan)を施行した352名のB型肝炎陽性症例のうち、HBVキャリア(ASC)176名と核酸アナログ製剤治療を受けているB型慢性肝疾患症例(NA-CHB)176名についてHBVの動態と肝発癌リスク因子を調査した。観察期間中央値5.91年の間にNA-CHBでは16名が肝細胞癌を発症したが、ASC群では発症しなかった。肝硬度測定(LSM)、肝脂肪量測定(CAP)についてはASCでは4.9±2.7kPa/236±59dB/m, NA-CHBでは 6.1±5.0kPa/227±5.7dB/m, 肝細胞癌発症例では 12.2±11.1kPa/260±49dB/mであった。B型慢性肝疾患の肝発癌における多変量解析では、男性、高齢、血小板数低値、LSM値がHCC発症と有意に関連することが明らかになった。さらにLSM(cut off 7.0kPa)は、肝細胞癌の発生を予測する上で最も高い識別力を示した。これら、男性、年齢、血小板数からなる既報のPAGE-Bスコア(J. Hepatol 2016)でPAGE-B中等度リスク群は55.6%と多くなる傾向があったが、本検討で抽出されたLSM因子を用いると中等度リスク群の中でもさらに層別化された(HR 5.203; 95%CI 1.308-20.8, p=0.019)。B型慢性肝疾患の肝発癌においては肝脂肪量ではなく肝硬度が有用な肝発癌の予測指標となることが明らかとなった。本研究概要はJDDW2023にて発表し、The Best Presenter Award in International Sessionを受賞した。基礎的検討においても、肝癌ゲノム情報に基づき、KMT2Bの特定exon領域のHBV integrationに注目した。ゲノム編集によって再現したiPS細胞を樹立することに成功し、肝細胞系譜へ誘導し、形質を比較検討することで、KMT2B Integrationが増殖亢進をきたすメカニズム解明を行った。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
PLOS ONE
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