研究課題
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B型肝炎をはじめとする慢性肝疾患において肝発癌リスクを正確に評価する事は、適切なサーベランスを行い、早期発見/治療による予後改善および肝発癌病態の解明につながると考えられる。本研究ではこれまでに確立してきたヒトinduced pluripotent stem cells (iPS細胞)の肝前駆細胞誘導・肝細胞成熟化誘導および肝炎ウイルス感染機構研究の学術・技術基盤および独自に構築した2000例以上からなる慢性肝疾患患者のコホートデータベースに基づいて、HBV肝発癌の病態解明、及び慢性肝疾患の進展を阻止しうる個人差を踏まえた精緻医療開発へ向けた基礎臨床の融合研究を行う。
核酸アナログ製剤治療中B型慢性肝疾患において、肝細胞癌の発生を予測する上で男性、高齢、血小板数低値に加え、肝硬度は最も高い識別力を示し、肝脂肪量ではなく肝硬度が有用な予測指標となることを明らかにした。基礎的検討では、B型肝炎ウイルス(HBV)関連肝細胞癌において、発癌機序の一つとされている宿主肝細胞にHBVゲノムが組込まれることについて、組込み頻度が2番目に多いKMT2B領域に注目し、健常者ヒトiPS細胞に対してゲノム編集を行い、HBVゲノム組み込みを再現した株を樹立した。肝細胞系譜への分化誘導した細胞を用いて解析し、KMT2B領域へのHBVゲノム組込みの機能的意義を検討した。
本研究成果からB型慢性肝疾患の肝発癌においては、男性、年齢、血小板数、肝硬度といった宿主因子を主とした因子が抽出されること、既存のHBV検査項目では検知できない因子がありうることについても示唆され、その社会的意義は大きいと考えられた。また肝発癌機序として、宿主肝細胞にHBVゲノムが組込まれることがあるが、今回の基礎的検討によって、機能的意義が不明であったKMT2B- HBV integrationによる肝発癌機構解明を進めることにより、HBV肝発癌の病態解明、及び慢性肝疾患の進展を阻止しうる個人差を踏まえた精緻医療開発へ向けた学術・技術的な基盤形成に貢献すると考えられ、学術的意義は大きい。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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