研究課題/領域番号 |
22K21006
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0907:口腔科学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
丸岡 春日 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (40962577)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 骨血管連関 / ビスホスホネート / 活性型ビタミンD / 骨特異的血管 / 血管周囲細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者は、副甲状腺ホルモン(PTH)による骨特異的血管の数・管腔径の増加、骨芽細胞系細胞および血管周囲細胞への作用を報告してきた。一方、血管や血管周囲細胞には、飲み込み作用やビタミンD受容体が発現することから、骨粗鬆症治療薬であるビスホスホネートや活性型ビタミンD3製剤の影響が及ぶ可能性が考えられる。そこで、本研究では、ビスホスホネートや活性型ビタミンD3製剤の血管や血管周囲細胞に対する作用、また逆に、これら薬剤が作用した血管・血管周囲細胞による骨芽細胞系細胞への影響について、動物モデルを用いたin vivo解析を中心に進める。
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研究実績の概要 |
CD31high/endomucinhigh骨特異的血管は、ephrinB2/EphB4などを介した骨芽細胞系細胞との細胞間相互作用(骨血管連関)を有する可能性が報告されている。研究代表者は、先行研究で、骨粗鬆症治療薬である副甲状腺ホルモン(PTH)の骨特異的血管に対する作用(血管数・管腔径の増加)や、骨芽細胞系細胞および血管周囲細胞(血管平滑筋細胞、周皮細胞、ストローマ細胞)への作用を見出してきた。本研究では、血管や血管周囲細胞が飲み込み作用やビタミンD受容体を発現することを踏まえ、骨粗鬆症治療薬であるビスホスホネートや活性型ビタミンD3製剤の血管や血管周囲細胞に対する作用、ならびに、これら薬剤が作用した血管・血管周囲細胞による骨芽細胞系細胞への影響について明らかにすることを目的とした。本目的を達成するため、生後6週齢野生型マウスにビスホスホネート製剤(アレンドロネート:ALN)を連続皮下投与した動物モデルを作成し、大腿骨・脛骨を組織学的に解析した。その結果、ALNを投与したマウスでは、コントロールマウスと比較して、endomucin陽性血管の数は変わらないものの、管腔径や面積の減少が認められた。また、ALN投与で血管壁の厚みが増すとともに、血管内皮細胞が血管内腔に向かって多数の小胞や小突起を形成させており、ALNによる血管壁の微細構造変化が示唆された。一方、ALN投与マウスの骨組織では、血管壁の三次元的な管腔形態維持に関わるEndomucinやその転写因子であるGata2、血管新生抑制因子であるVash1の発現が上昇していた。以上のことから、ALN投与により血管新生が抑制される一方、血管の形態異常を修復しようとする機構が働いている可能性が推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨特異的血管は発見されてまだ日が浅く、骨特異的血管や血管周囲細胞に対する各種骨粗鬆症治療薬の影響や血管系を介した骨代謝調節については、ほとんど報告がなされていない。研究代表者は、血管内皮細胞が飲み込み作用を有することから、ビスホスホネートが破骨細胞と同様に血管内皮細胞内に取り込まれ、細胞骨格阻害などの影響を及ぼす可能性を推測し、本研究を遂行した。令和4年度の研究成果では、ALNの投与により骨特異的血管の管腔径や面積の減少、血管壁の微細構造変化が認められ、研究代表者の仮説と矛盾しない結果が得られたと考えている。また、これまで、ビスホスホネート投与で破骨細胞が抑制されると、骨芽細胞・破骨細胞のカップリングが阻害され、結果として、骨芽細胞の活性も低下することが報告されてきた。一方、骨特異的血管による骨芽細胞系細胞活性化の可能性も報告されていることから、本研究結果と合わせて考えると、ALN投与では、破骨細胞のみならず骨特異的血管を介して骨芽細胞活性が低下する可能性も否めない。令和4年度の研究成果を踏まえ、令和5年度は、当初の計画通り、ALNによる血管系を介した骨代謝調節の可能性について検索してゆく。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の検索では、主にビスホスホネート製剤の一つであるアレンドロネートによるendomucin陽性骨特異的血管への影響について解析を行い、ALNが骨特異的血管の管腔径や面積の減少、血管壁の構造異常を誘導する可能性を見出した。令和5年度は、ALNが作用した骨特異的血管や血管周囲細胞における細胞骨格関連因子(Rho/Ras, actin filament, podoplanin/CD44)や細胞接着因子(VCAM-1/VE-cadherin)の局在変化を解析することで、ALNが血管系へ及ぼす影響をより詳細に検討してゆく。さらには、血管周囲におけるストローマ細胞や骨芽細胞系細胞におけるカップリングや分化関連因子(ephrinB2/EphB4, notch/HIF1α, Runx2/Osterix/ALP, Ki67/PCNA)、細胞増殖を解析することで、骨特異的血管と骨芽細胞系細胞との細胞連関(骨血管連関)について検索を進めたい。一方、これらの解析と並行して、活性型ビタミンD製剤による骨特異的血管、血管周囲細胞に対する影響についても検索を進める。血管内皮細胞や周囲細胞はビタミンD受容体を有すること、また、活性型ビタミンD3は、血管平滑筋細胞を増殖させるとともに、幹細胞から骨芽細胞系細胞への分化誘導を促進することが知られている。従って、活性型ビタミンD3製剤による骨特異的血管への直接作用や骨血管連関が生じている可能性は極めて高く、これら詳細を明らかにしてゆく必要があると考えている。
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