研究課題/領域番号 |
22K21077
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0908:社会医学、看護学およびその関連分野
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
河口 謙二郎 千葉大学, 予防医学センター, 特任助教 (80953207)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 建造環境 / ウォーカビリティ / 高齢者 / 近隣 / 社会疫学 / アウトカムワイド分析 / 健康 |
研究開始時の研究の概要 |
人は、周囲を取り巻く環境から様々な影響を受ける。人の健康も同様である。人の健康に影響を与える環境の1つに建造環境(人工的に造られた物理的な環境)がある。建造環境が人の健康にどのような影響を及ぼしているのかが解明されれば、環境を変えることによってそこに暮らす人たちが意識しなくても健康になる環境をつくることが可能となる。 そこで、本研究では、建造環境の中でもウォーカビリティ(歩きやすい環境)と高齢者の身体的・心理的・社会的健康との関係を検証する。ウォーカブルな環境が高齢者の健康に与える総合的な影響を明らかにすることで、「暮らすだけで健康になるまちづくり」に貢献する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、ウォーカビリティ(歩きやすい環境)と高齢者の身体的・心理的・社会的健康との関係を検証することであった。本研究の特長は、大規模な高齢者のデータを用いて、居住地域の客観的な環境要因であるウォーカビリティと、身体的のみならず心理的・社会的な健康指標との関連を検証した点にある。これまでの研究の多くは、身体的健康に焦点を当てたものが主であったが、本研究では、高齢者の健康を多面的に捉え、well-beingの向上に資する環境要因を明らかにすることを目指した。 研究方法として、まず、地理情報システム(Geographic Information System: GIS)を用いて、住まい近隣のウォーカビリティ(歩きやすさ)を分析した。具体的には、ウォーカビリティの構成要素に基づき、人口密度、最寄りの商業集積地までの距離、最寄りの公園までの距離、道路密度の4指標を評価し、これらを総合的に考慮したウォーカビリティ指標を算出した。次に、日本の高齢者を対象とした大規模縦断研究である日本老年学的評価研究(JAGES: Japan Gerontological Evaluation Study)のデータと、算出したウォーカビリティ指標を結合して分析に用いた。本研究では、この大規模データを活用することで、ウォーカビリティと健康との関連を統計的に検証することが可能となった。 分析手法としては、1つの曝露要因に対し複数のアウトカムとの関係を同時に検証する疫学手法であるアウトカムワイド分析を採用し、ウォーカビリティと様々な健康アウトカムの関連を網羅的に検証した。この手法は、複数の健康アウトカムを同時に扱うことで、曝露要因の影響をより包括的に評価できる利点がある。本研究では、身体的健康のみならずうつ、認知機能、社会参加、主観的幸福感など、多岐にわたる健康指標を用いて、ウォーカビリティとの関連を多面的に検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分析自体は完了したものの、得られた結果の一部が先行研究の知見と矛盾しているため、その原因の探索に取り組んでいる。具体的には、分析方法や分析プロセスに問題がないか、データの質や解釈に誤りがないかなど、様々な角度から検証を行っている。一方で、結果が先行研究と真に反するものであるという可能性も視野に入れ、データの再確認とともに、専門家との議論を重ねながら、慎重に検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策を以下のように考えている。 1. 分析方法・プロセスの再確認と修正:現在の分析方法・プロセスを詳細に見直し、改善点があれば修正を加える。 2. 追加データの収集・分析:結果の信頼性を高めるため、可能であれば追加のデータで分析を拡充する。これにより、結果の頑健性を確認する。 3. 先行研究の精査と比較:先行研究をより深く精査し、本研究の結果との差異が生じた原因を探る。 4. 学会発表と論文執筆:上記の過程を経て、結果の信頼性と解釈の妥当性が確認できた段階で、学会発表を行い、論文執筆に着手する。
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