研究課題/領域番号 |
22K21096
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0908:社会医学、看護学およびその関連分野
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
安藤 雅行 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構(BKC), 研究員 (10963465)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 思い出想起支援 / 高齢者支援 / 回想法 / 自然言語処理 / 対話支援 / 大規模言語モデル / 画像生成AI / 深層学習 / ヒューマンコンピュータインタラクション |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,認知機能低下の予防が必要である高齢者を対象として,高齢者の過去に関連するエピソード(過去エピソード)から,深層学習により個人に合わせた過去を想起させるような話題を生成し,回想法と呼ばれる対話による過去の記憶の想起を行う療法を,介護スタッフに代わって高齢者に実施する音声対話システムの構築を目指す.さらに,構築した対話システムによる高齢者への回想法の実施実験と認知機能低下予防効果についての検証を,システムの定期的な利用とアンケート調査によって行う.
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研究実績の概要 |
近年,高齢者の認知症予防の手段として,回想法などの思い出想起支援に注目が集まっている.しかし,回想法のための思い出に関連する物品や専門スタッフの不足,家族のような日常的に思い出を話す親しい相手との会話の減少により,高齢者に十分な回想法が実施されていないのが現状である. そこで本研究では,高齢の過去に関するエピソードを活用して,①回想法のための話題生成,②回想法に基づいて記憶の想起を促す対話システムの開発,③高齢者が対話システムに対して自身の家族と話す時のような親近感を感じるための要素の検討を行い,高齢者が自主的に回想法を行える場を提供することを目的とした. 22年度では,③に関連して,家族間で日常的に自身の思い出話や日々の出来事を話し合う状況として親子間の会話に着目し,親が子の日常生活を心配する様子や親しげな口調といった要素を付与した対話botが思い出の想起支援につながるか検証を行い,大学生を対象とした実験において親を感じさせる要素が対話相手への親近感と振り返りの意欲の向上につながることを示した. 23年度では,①に関連して,ユーザの過去の思い出の情報からその情景を再現した画像を生成し,思い出想起を促すシステムの構築を行った.このシステムは,画像生成AIを利用して入力した文章の内容に基づく画像を生成する機能と,生成画像を文章による指示に基づき修正する機能を備えており,思い出の内容を言語化することと,生成された思い出の画像を記憶に近づけるように修正することの2つの側面から,思い出の想起を支援する.大学生を対象とした検証実験の結果,提案システムによる思い出を画像化と,その過程で思い出の内容を言語として整理し,生成された画像と思い出の細かい差分に注目して修正を行う行為が,思い出の想起を促すことを示した.現在,この生成画像を回想法時の話題とした回想法を行う対話システムの構築を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究における3つの課題のうち,「①回想法のための話題生成」と「③高齢者が対話システムに対して自身の家族と話す時のような親近感を感じるための要素の検討」に対する手法の確立を明らかにした. 一方で,「②回想法に基づいて記憶の想起を促す対話システム」の開発やそれぞれの課題に対するアプローチについて,コロナウイルスの影響により,高齢者介護施設での高齢者,認知症患者を対象としたデータ取得・実験実施に遅れが発生している.そのため,研究の補助事業期間延長を行なった. ただし,2024年4月現在,京都府の高齢者介護施設で実験を行える体制を整えている段階にあり,夏頃に高齢者・認知症患者を対象とした実験調査を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究における課題のうち「②回想法に基づいて記憶の想起を促す対話システム」の開発を行う.また,課題①②③に対するアプローチについて,改めて協力関係にある高齢者介護施設で高齢者・認知症患者を対象とした効果検証を実施する.
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