研究課題/領域番号 |
22K21099
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0908:社会医学、看護学およびその関連分野
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
山崎 晃 川崎医科大学, 医学部, 助教 (70963354)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / 液-液相分離 / lncRNA / iPS細胞由来運動神経細胞 / CRISPR/dCas13 / iPS細胞由来運動神経 |
研究開始時の研究の概要 |
家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の多くはRNA結合タンパク質をコードする遺伝子に変異をもつ。これらは複数のノンコーディングRNA(ncRNA)等と凝集し、液-液相分離と呼ばれる膜を持たない集合体を形成する。ALS患者由来の運動神経細胞では液-液相分離であるストレス顆粒が異常形成されるものの、関与するncRNAについては不明である。本研究では、ALSで発現量が変化しているncRNAをiPS細胞由来運動神経細胞でノックダウンし、ストレス顆粒の異常形成による細胞死抵抗性を指標にスクリーニングすることで、候補ncRNAを同定し、治療標的となるか検証する。
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研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位・下位運動ニューロンが選択的かつ進行的に変性・消失する神経変性疾患である。病理機序は不明で、家族性ALSの多くでRNA結合タンパク質をコードする遺伝子に変異をもつ。これらは複数のRNA等と凝集し、液-液相分離と呼ばれる膜を持たない集合体を形成する。近年、液-液相分離の骨格として特異的なノンコーディングRNA(ncRNA)が働くことが明らかになってきた。ALS患者由来の運動神経細胞では液-液相分離であるストレス顆粒が異常形成されるものの、関与するncRNAについては不明である。本研究では、ALSで発現量が変化しているncRNAに着目し、(1)ALS患者のiPS細胞から運動神経細胞を作製し、(2)候補ncRNAのノックダウンを行い、(3)ストレス顆粒の異常形成による細胞死への抵抗性を指標にスクリーニングすることで、液-液相分離構造体形成に関わるncRNAを同定し、構造体解消が治療の標的となりうるか検証した。令和4年度は(1)についてALS患者由来のiPS細胞から運動神経細胞への分化系を検討し、12株で神経細胞への分化を確認した。(2)については候補lncRNAノックダウン用ガイドRNAsデザインを概ね完了した。(3)に関しては液-液相分離を検出するためのマーカー分子の免疫染色系を構築した。 令和5年度は、ALS患者由来のiPS細胞のAAVS1のSafe Harbor遺伝子座に光活性型dCas13を組み込んだdCas13発現株を作製した。この株に対して(2)で設計した約3万種類のgRNAを発現するレンチウイルスをトランスフェクションし、運動神経細胞まで分化させた。この細胞に対して亜ヒ酸を処理し、生存した細胞を回収してアンプリコンシーケンスすることで、生存細胞でエンリッチメントされたgRNAを分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当研究計画では次の3つのステップで実験を進めている。(1)ALS患者のiPS細胞から運動神経細胞を作製、(2)候補ncRNAに対するノックダウン系の樹立、(3)ストレス顆粒の異常形成による細胞死に抵抗性を示すncRNAのスクリーニング。それぞれの進捗状況について、 (1)ALS患者由来のiPS細胞から運動神経細胞への分化系を検討し、12株で神経細胞への分化を確認しており、計画は完了している。 (2)ALS患者では特有のRNA発現パターンが報告されており、そのうち有意に発現量が変動しているlncRNAについて、CRISPR/dCas13システムを用いてノックダウンするために、それぞれのガイドRNAをデザインした。また、分化させた運動神経細胞でdCas13/gRNAを発現させる系の構築を実施し、予備的な実験としてFUSの局在を撹乱するgRNAが機能することを確認した。更に設計した約3万種類のgRNAを用いて、ヒ素感受性を指標としたプールスクリーニングを実施した。次世代シーケンスを外注しており、予定以上に納品・解析に時間を要したため少し遅れている。 (3)では、液-液相分離を検出するために、その構成要素であるTDP-43およびFUSタンパク質の免疫染色系を構築した。実験系は構築できているものの、(2)のスクリーニング後に実施するため、やや遅れているため少し遅れている。 以上から、本課題の研究状況は少し遅れているものの、確実に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(2)のプールスクリーニングに関しては2024年5月中に完了予定である。解析完了次第(3)の免疫染色実験を実施するため、2024年内に予定した研究は完了する予定である。 本研究を遂行できれば、ALSで見られる異常な相分離形成に関わるRNA配列が得られることが期待される。近年トフェルセンを始めとしてALSの治療薬として核酸医薬が大いに期待されている。従って今後は発見したRNA配列が治療標的となりうるか研究を進める方針である。
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