研究課題/領域番号 |
22K21162
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0908:社会医学、看護学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道立衛生研究所 |
研究代表者 |
落合 崇浩 北海道立衛生研究所, その他部局等, 研究職員 (00945082)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | サルモネラ / 魚類 / ウナギ / 食品微生物 / 食品衛生 / 食中毒 / 全ゲノム解析 |
研究開始時の研究の概要 |
卵や食肉の汚染に端を発するサルモネラ食中毒に関連する調査研究は多くなされている。一方、魚介類が関与したサルモネラ食中毒事例も報告されているが、その原因解明に向けた公衆衛生学的な研究活動が十分になされているとは言い難い。 本研究では、サルモネラの魚類に対する付着機構や汚染原因の解明に向け、野外での魚類捕獲を伴うサルモネラ汚染実態調査を行うと共に、魚類が関与した食中毒事例で分離されたサルモネラ属菌株、魚類関与事例とは疫学的関連性のないサルモネラ属菌株(散発事例の患者株、健康保菌株、鶏由来株)をそれぞれゲノム解析し、菌株間の関連性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究はサルモネラの魚類に対する付着機構や汚染原因の解明を目的とする。2023年度も魚類からのサルモネラ分離試験を行った。天然魚68個体(16魚種)、養殖魚67個体(8魚種)、計135個体の内臓を検査対象とした。養殖ニホンウナギから2種類の血清型Saintpaul、Litchfieldのサルモネラが分離され、保有率は30%(6/20検体)であった。その他の養殖魚および天然魚からサルモネラが分離されなかった。 分離株18株および保管株21株の全ゲノム配列をMiSeqで解読した。血清型内訳はSaintpaulが28株、Litchfieldが9株、OUT:l,v:1,2が1株、Infantisが1株であった。解読した配列および公開ゲノム配列を用いたin silico MLST解析やSNVs解析を実施した。 MLST解析の結果、ニホンウナギから得られた血清型Litchfieldは全てST214、Saintpaulは全てST27と判明した。SNVs解析により、346株のST214は2つのクラスターに大別された。魚類由来株が属するクラスターと哺乳類や鳥類由来株が含まれるクラスターであった。ニホンウナギ由来株が海外の魚類由来株と同一のクラスターに属することから、この系統は魚類と親和性の高い株である可能性がある。481株のST27に対するSNVs解析では、ニホンウナギ由来株がアメリカの家禽株とは遠縁であること、ベトナムの魚類由来株が比較的近縁であることがわかった。 今回、ニホンウナギ由来ST214およびST27が複数系統分離された。このことは、養殖池の違いを反映していると同時に、養殖段階の魚に特定系統のサルモネラが付着する可能性を示唆している。また、ニホンウナギ由来株と比較的近縁な患者株も存在することから、サルモネラが魚類と調理環境を介してヒトに到達する感染経路の存在が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度および2023年度に養殖ニホンウナギから分離したサルモネラおよび所属機関保有株に対し全ゲノム解析を実施した。2023年度末、データ数を増やし解析精度を高める目的で、他機関から解析対象となる血清型のサルモネラを約60株入手した。2024年度にこの株の全ゲノム配列を解読する必要があるため、進捗状況がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
未調査地域における魚類とその生育環境からのサルモネラ分離試験を継続する。さらに、協力機関から分与された血清型Saintpaul およびLitchfieldの全ゲノム配列を解読する。 これまでのゲノム解析の結果、魚類に親和性の高いクラスターの存在が示唆されたため、当該クラスターに特異的な遺伝子探索を目的としたパンゲノム解析を実施する。
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