研究課題/領域番号 |
22K21271
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
1001:情報科学、情報工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京理科大学 (2023) 東京大学 (2022) |
研究代表者 |
神保 洸貴 東京理科大学, 創域理工学部情報計算科学科, 助教 (80966630)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 公開鍵共有 / 非対称性 / 秘密計算 / 紛失通信 |
研究開始時の研究の概要 |
「非対称」な鍵共有アルゴリズムとは2者間で共通鍵生成規則や秘密鍵空間が異なる鍵共有アルゴリズムである.それに対しDiffie-Hellman法など,従来の鍵共有アルゴリ ズムは2者間で計算規則及び鍵空間が同一であり,「対称的」な鍵共有アルゴリズムと呼べる.「対称的」な鍵共有アルゴリズムについては活発に研究が行われているが,「非対称」 な鍵共有アルゴリズムについての研究は広く行われておらず,非対称性により実社会へもたらすことができる恩恵についてはほとんど明らかにされていない.本研究では非対称鍵共有 アルゴリズムとその性質を数理的に明らかにし,秘密計算等技術への応用可能性を考察する.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,非対称な構造を持った鍵共有アルゴリズム(以後,非対称鍵共有と表記する)の(課題1)性質を数学的に記述すること (課題2)非対称鍵共有の実社会への応用可能性を議論することである.2023年度は,2022年度に判明した(課題0)既存研究における安全性証明の不十分な点の解決にまずは注力した.その後,上記(課題1),(課題2)に関して研究を進め,それぞれ以下のような結果が得られている. (課題1)先行研究において,Diffie-Hellman(D-H)鍵共有法を,非対称鍵共有フレームワーク(SAPKA)に則って非対称な構造を持たせ,さらに行列演算を用いて鍵生成を行うよう改良することで,2人の通信者(Alice,Bobと表記)のうち片側(Aliceとする)の計算量を,安全性を損なうことなく下げる事が示唆されていた.2023年度の研究では,D-H以外の任意の鍵共有アルゴリズムも同様に改良することを目的とし,改良可能となる条件の導出を行った.(課題0)においてAliceの計算量を安全性を損なうことなく下げる事が可能な性質に,一方向性関数の線形性に大きな関わりがある事がわかった.ここでは,この線形性を保存しつつ,鍵共有プロセスを一般の集合や群をもとに構成することで,先行研究にてD-Hに対して行った改良を一般化した. (課題2)紛失通信や擬似乱数生成機など,鍵共有アルゴリズムを構成要素とした様々な暗号プロトコルが存在する.2023年度は,これらプロトコルへの非対称鍵共有の応用を目的として,理論的検証と簡易的な実装実験を行った.(課題1)の改良を経ると,同時かつ並列的に複数個の共有鍵を生成する事が可能となる.並列計算を用いることで,プロセッサーの個数をkとすると,改良前と比べて,kの平方根のスケールで計算効率が良くなる事がわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の予定では,2023年度は(課題1)任意の鍵共有アルゴリズムに対して,Aliceの計算量を,安全性を損なうことなく削減するための十分条件の導出を完了する,(課題2)課題1の結果の実社会での応用可能性を議論する事であった.研究実績の概要で述べたように,2022年度に判明した(課題0)既存研究における安全性証明の不十分な点の解決を,急遽行う必要があったため,両課題とも(課題0)に伴い開始が遅れる形となった.(課題0)は2022年度中に解決しており, その後(課題1,2)は予定通りの進捗速度で進んではいるが,開始のずれ込みにより,2023年度終了時点で計画していた進捗状況には達していない.
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」に記載の通り,研究計画に遅れが発生しているので,遅れを挽回することに注力する.上記の(課題1)に関して,現時点では条件の導出までは行う事ができておらず,いくつかのヒューリスティックが提示されているに過ぎない. 数理的な考察を深めることで,これらから十分条件に落とし込む必要がある.(課題2)に関して,現時点までは特定の暗号プロトコルに対しての応用可能性を考えていたわけではなく,汎用的な応用可能性を考察していた.実社会での有用性を示すためには,具体的な紛失通信プロトコルや疑似乱数生成機に非対称鍵共有を組み込み実装実験によりパフォーマンスを評価する必要があると考えている.
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