研究課題/領域番号 |
22K21277
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
1001:情報科学、情報工学およびその関連分野
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北村 直暉 大阪大学, 大学院情報科学研究科, 助教 (30963657)
|
研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 分散アルゴリズム / パラメータ化アルゴリズム / 普遍的な最適アルゴリズム |
研究開始時の研究の概要 |
分散グラフシステムにおいて与えられた問題を計算機が協調して少ない計算で求めるようなアルゴリズムの設計は重要なことの一つである.従来の研究では,与えられたアルゴリズムに対して実行時間が最も長くなるようなネットワークグラフのインスタンスに対する計算時間を評価する最悪時実行時間計算量に基づくアルゴリズムの設計が主流であった.しかしネットワークグラフの構造が木や平面である等の良い性質を持つ場合は一般のグラフにおける下界を打ち破るような高速なアルゴリズムが存在することがある. 本研究では,個々のネットワークグラフに対して,そのグラフ上で特定の問題を解くための効率的なアルゴリズムの設計手法の確立を目指す.
|
研究実績の概要 |
本研究では個々のグラフに適応した分散アルゴリズムの設計を行うことを目的とする.従来の最悪計算時に基づく性能の評価では,一部の特殊なインスタンスだけが最悪計算時間になり,その他の多くのグラフでは高速に解くアルゴリズムが存在する場合が考えられる.本研究の課題は(1)グラフの種類を細分化し,特定のグラフに対する高速なアルゴリズムを設計すること(2)グラフ構造に適応した普遍的な最適アルゴリズムを他の問題に対しても考えることが可能であるかを明らかにすることである.今年度は,グラフパラメータの一つである木幅に関して,木幅の近似した値と近似した木分解を分散グラフシステム上で構築するアルゴリズムを研究した.この結果は国際会議SPAAに採択されており高い評価を得ている.また,今回の研究テーマと関連深いモバイルエージェントシステムや逐次型のシステムにおけるパラメータ化アルゴリズムについてもいくつかの結果を得られている.具体的には以下のとおりである. (1)0ビットの永続メモリを持つエージェントと1ビットの永続メモリを持つエージェントの計算能力の解明.特に頂点にO(log n)ビットの書き込み可能なメモリがあり,グラフが2辺連結である場合は両者の計算能力が等価であることを示した. (2)エネルギーシェアリングエージェントモデルにおける循環探索アルゴリズムの解明.グラフの全ての辺を辿り,初期位置に戻るのに必要なエネルギー量の最小値について研究した. (3)最短経路の最致命辺問題に関して,パス幅と削除する辺の本数をパラメータとしてもW[1]困難であることを示した. (1)の結果は国際会議OPODISに採択がされて高い評価が得られている.(2)の結果は国内学会の電子情報通信学会の全国大会で発表をしている.(3)の結果は国内学会の電子情報通信学会に現在投稿をしており発表をする予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施の概要に書いてあるように本年度は2本の成果を国際学会に採録されており,1本の成果を国内学会で発表をしている.分散グラフシステム上での近似された木幅に対する木分解の高速な設計は研究課題(1)の特定のグラフに対する高速なアルゴリズムの設計に大きく貢献されることが期待される.またそれ以外にもモバイルエージェントや逐次型システムといった周辺分野における研究も成果が得られている.この点は当初予定していなかったが,本研究のテーマにもポジティブな影響を与えており,今後に期待が持てる状況と言える.そのため研究課題は概ね順調に進展していると言える.
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究に引き続きグラフに適応した分散アルゴリズムの設計を行う.研究課題(1)に関してはすでに一定の成果が得られたので,研究課題(2)の普遍的な最適アルゴリズムを重点的に研究を進めていく.普遍的な最適アルゴリズムに関しては,分散グラフシステムのモデルの一つであるHYBRIDモデルにおける結果が新しく発表されていたので,その論文の結果を他の問題を解くアルゴリズムや別の分散グラフシステムのモデル上のアルゴリズムの構築に利用できないかを検討する.また,今年度は本テーマと関りの深いモバイルエージェントシステムに関していくつかの知見や成果が得られたので,それらの成果を発展させて国際会議やジャーナルに投稿することを目指す.
|