研究実績の概要 |
本研究は、heterogeneous metric learning に基づいたテンプレートベースの結晶構造予測手法の提案を目的としている。本手法では、与えられた化学組成と結晶構造のペアが安定構造であるか否かを判別する関数を結晶構造データベースから学習し、その関数の評価値に基づいたテンプレート構造の提案によって構造予測を行う。当該年度では、化学組成と結晶構造のペアが安定構造であるか否かを判別する関数の推定のために、複数の距離学習モデル比較し最適なモデルの選定を行なった。最適なモデルでは、96%を超える確率で安定構造と非安定構造を分類することに成功した。また、この関数に基づいて提案されたテンプレート構造から、同一組成比でなくても対応可能な元素置き換え手法によって、クエリ組成の安定構造候補を生成するアルゴリズムを完成させた。これらを結合させることで、全体的な結晶構造システムが完成し、このシステムに基づいた結晶構造予測の数値実験を行なった。この結果はポスター発表 (IBIS2023) と口頭発表 (日本化学会春季年会2024) にて報告した。 また、化学組成と結晶構造の情報をできるだけ情報損失が少なく記述子 (=固定長ベクトル) に変換する一般的な枠組みとしてカーネル平均記述子を主に昨年度に開発したが、査読を経て当該年度に論文が出版された [1]。この手法は、結晶構造予測システムを構築する上での基礎技術として活用している。
[1] Kusaba, M., Hayashi, Y., Liu, C., Wakiuchi, A., & Yoshida, R. (2023). Representation of materials by kernel mean embedding. Physical Review B, 108(13), 134107.
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