研究課題/領域番号 |
22K21295
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
1002:人間情報学、応用情報学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井上 克馬 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 助教 (20962294)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | レザバー計算 / 力学系理論 / 深層学習 / 物理レザバー計算 / ニューロモーフィックデバイス / 誤差逆伝搬法 / ニューラルネットワーク / 機械学習 / 非線形力学系 / 拡張DFA法 / リザバー計算 / 物理リザバー計算 |
研究開始時の研究の概要 |
人間は卓越した学習機能を有ししなやかな振る舞いを実現している。機械学習はこの学習機能を模した計算モデルを構成する諸手法の総称であり近年その汎用性から脚光を浴びている。一方で現状の機械学習は計算機上の静的なアルゴリズムとして無定形に実装され、その様態は脳-身体-環境間の複雑な相互作用、すなわち身体性の動的な構造として立ち現れる人間のそれとは大きく乖離している。本研究では、脳・身体における多数の要素間の相互作用を抽象化した非線形力学系上で、機械学習アルゴリズムと等価な機能性を有する数理モデルの汎用的な構成法を開発しその系統的な解析を通して人間の学習機能の背後にある普遍的な数理的特性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、脳・身体における多数の要素と、それらの間の相互作用を抽象化した大自由度非線形力学系上で、機械学習アルゴリズムと等価な機能性を持つ数理モデルの汎用的な構成法を開発し、その系統的な解析を通して人間が有する学習機能の背後に通底する普遍的な数理的特性の解明を目指す。本年度は昨年度選定された学習アルゴリズムに関して体系的な力学系的解析を行い、その数値安定性と情報処理能力をより詳細に調査した。現在得られた解析結果を基に、生物学的な脳が有する計算論的な機能性との比較を通して、その役割や重要な特性に関して議論を重ねており、論文発表に向けた準備を進めている。また並行して、日本電信電話株式会社との共同研究の一環で昨年度発表した拡張DFA法[M. Nakajima & K. Inoue, et. al., Nature Communications, 2022] に関しても研究が進行中である。より低消費エネルギーで効率的に演算を行う計算媒体として、物理系を計算過程に用いる物理ニューラルネットワーク(以下PNN)が着目されているが、一般にその調整には、物理系の状態変化や微分応答の正確な把握が要求されその拡張性に難があった。拡張DFA法はそのようなシステムの精密な把握を必要としないため、より大規模なPNNの学習に適していると期待される。本年度はその拡張DFA法に関して、1件の招待講演による学会発表を行った他、普遍的な学習原理の解明に向け、より学習アルゴリズムの一般的な形式に関して研究を進めた。現在これらの成果をまとめて発表に向けた準備を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度選定された基盤となる学習アルゴリズムに関して、大規模な数値実験によって体系的に解析を行い、その数値安定性や潜在する情報処理能力に関してより詳細な描像を得た。また解析結果と生物学的な脳が有する計算論的機能性との対比を通して議論を重ね、その機能性や背後の普遍的な特性に関して一定の知見が得られた。加えて拡張DFA法に関してもより制約の少ない形式に関して調査を行い、有意義な実験結果が得られた。このように、本研究課題の目的の達成のため重要となる知見を得られたといえるため、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、得られた研究結果の発表に向けて論文執筆と推敲を中心に進める。また拡張DFA法で得られた知見と合わせてより学習機能に関する普遍的な制約条件の解明を目指す。
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